中学受験塾の室長が明かす、「モンスタークレーマー」の実態……「医学部狙い」の父親が暴走
そうこうしているうちに、6年生となった湊君。受験本番を控え、受験校を決定する面談が開かれたという。
「お父さんは相変わらず医学部に強いとされる難関校3校以外は受験させないと頑なでした。しかし、湊君の実力では合格の可能性はほとんどありません。それで、医学部がある大学附属校の中で、合格の可能性がある学校を勧めました」
結局、湊君は受験日程の関係で、その難関校3校の中から2校を受験し、不合格。塾が推した大学附属校Tに補欠で繰り上げ合格。現在、その学校の中学校に通っている。
「お父さんは最後の最後まで『こんな塾に行かせたから、難関校Sに行けなかった』とお怒りでしたが、それでも、塾を辞めなかったのは、我々を受験のストレスのはけ口にされていたのかな? とも思いますね。親御さんのストレスを緩和するのも我々の仕事の一つではあるものの、正直申し上げて、こういうタイプの親御さんの受験は、お子さんが苦戦を強いられるものです」
中高一貫校と中学受験塾は情報交換をしていることが多い。この室長の元には、中学生になった湊君の現状が学校から報告されていた。
「湊君は生物部に入って、昆虫採集に夢中だそうです。成績は芳しくないらしいですが、お父さんとしては、理系の芽があるということで、医学部はまだ諦めていないとか。湊君が医者になりたいのかまでは、学校も把握していないものの、我々としては、とりあえずは湊君が楽しそうに通学しているということがわかったので、とてもうれしく思っています」
冒頭でもご紹介したが、中学受験は「親子の受験」であるがゆえ、親の夢や希望を子どもに押し付けやすい。しかし、当然ながら、子どもの人生と親の人生は違う。中学受験に参入した親は、事あるごとに「これは本当に子どものためなのか?」ということを確かめながら歩みを進めるべきだと思う。そうしたほうが、わが子を取り巻く状況が好転していくように感じている。