King&Princeの空中分解を招いたジュリー氏……経営のプロが語る「ジャニーズ事務所立て直し」のためにすべきこと
――元V6の井ノ原快彦がジャニーズアイランド新社長に就任しましたが、ジュリー氏から直接打診されたそうです。この話だけ聞くと、組織運営の透明化とは真逆の方向に行っている気もしますが……。
大関 関連会社の社長を、自分の言うことを聞く人に置き換えたように見えますよね。言うなれば、先代(ジャニー氏)の番頭さんだった滝沢氏が去ったので、自分のことをわかってくれる新しい番頭さんに井ノ原さんを指名したのでしょうが、それはあってしかるべきだと思います。
ただやはり気になるのは、今回の人選に、自分の息がかかっていない第三者の意見を取り入れていたのかという点。一般的に、大きな会社だと、役員の人選は社長ではなく、社外取締役が委員の過半数を占める指名委員会が担います。もちろん社長の意見も聞きますが、そのうえで「本当にその人選は正しいのか」を吟味していくのです。しかし、そういった過程は経ていないでしょうね。
――井ノ原は今後、タレント業と社長業を両立していくそう。
大関 一般の会社の管理職にもいえることですが、プレーイングマネジャーって、うまくいかないんですよ。本人に、「プレーヤーとして頑張っていれば、マネジメントをさぼっていても、上から文句言われないでしょ」という逃げ道ができてしまうから。
ジュリー氏がもし、「マネジメントに向いている」という理由で井ノ原さんを抜てきしたなら、「芸能活動からは足を洗いなさい」と言うべき。ただ、「自分が扱いやすい」とか、「人柄がいいのでジャニーズJr.たちが言うことを聞くだろう」という理由だけで選んだとすれば、のちのちうまくいかなくなると思います。
――一連の騒動を受け、ファンから「終わりの始まり」とまで言われるジャニーズ事務所ですが、今後の立て直しには問題が山積みですね。
大関 こうなったのは、すべては経営者の責任です。今後は、この経験をどう生かせるかにかかっています。ジュリー氏には何よりもまず「組織運営の透明化」に取り組んでほしいですね。
取材協力:大関暁夫(おおぜき・あけお)
All About「組織マネジメント」ガイド。東北大学卒。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントの傍ら上場企業役員として企業運営に携わる。