コラム
老いゆく親と、どう向き合う?

生活保護を受ける兄と財産分与の問題に直面――30代で両親を看取った女性が「公平に半分」と決めた理由

2022/11/20 18:00
坂口鈴香(ライター)

「父が亡くなった年の年末、仕事に力が入らなくなりました。次の年も同じ仕事をすることが考えられない。これは、次のステップに進む合図じゃないかと思ったんです。ちょうどオンラインの仕事が入ったこともあり、その仕事をしながら旅をしようと決めました」

 きっかけの一つになったのが、その年の大みそかのことだ。

「父が亡くなり、兄はいるものの、私が帰る家はなくなりました。大みそかに、友人が家に呼んでくれて寂しい思いはしなくて済みましたが、元日は友人家族で集まるとのこと。私はそこには参加できないわけで……自分は友人の“家族”ではないことを痛感しました」

 一方、若いうちに親を看取ったことで、大きな解放感を得られたという。

「2人の死を見て、人の一生なんてそう大きく違わないと思えたんです。母が亡くなるまでは自分のキャリアを細かく考えていましたが、いったん全部手放してもいいんじゃないか。そして旅をしながら、家族の形を考えてもいいんじゃないかと思いました。血縁はなくても、人を助け、助けられながら、世界に家族をつくっていきたいという気持ちが強くなりましたね」

 あと半年もすれば、自転車で友人のいる九州に向けて出発するつもりだ。住んでいたシェアハウスは解約した。荷物は友人に預かってもらったスーツケースと、自分が背負うリュックのみになった。

 自転車旅は、SNSで発信していくことにしている。中村さんからの報告が楽しみだ。

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2022/11/20 18:00
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