暮らし
白央篤司の「食本書評」
「今、〇〇が食べたい」だけはゆずれない! 食の思い出を詰め合わせた四季別ショートエッセイ集
2022/11/13 18:00
真似してみたい料理やアイディアがたくさん載っているのも大きな魅力だ。コンビーフのフライはやったことなかったなあ。煮干しの天ぷらにも誘われる(ここの描写、シンプルきわまりないのにお酒が飲みたくてたまらなくなる!)。「がり餅」を入れる鍋はすぐにでもやってみたい。
エッセイなんだけれども一編一編がショートムービーのようでもあり、長めの短歌のようでもあり。ちょっとホッとしたいとき、ひと息つきたいとき、あたたかい飲みものや1杯のワイン、あるいはひと粒のチョコレートを求めるような感じで、私はよく『荒野の胃袋』を開いては数編読んで、リラックスしてきた。
そう、実は本書、2014年に発売されたものの文庫化。現在単行本のほうは入手困難なので再販が嬉しく、ぜひともご紹介したかった。文庫化に際して、作家・角田光代氏との対談「生きること、食べること」も収録されている。角田さんも食の時間をすごく大切にされる方だ。おふたりがコロナ禍を経て感じられたことも興味深い。
最終更新:2022/11/13 18:00