近藤真彦と中森明菜、元カップルがそれぞれ再始動! いま振り返る2人の“いわくつき”共演映画
後半に入りユキが誠と出会い、恋に落ちると同時に芳一が消えることから、芳一は孤独なユキの深層心理が作り出したイマジナリーフレンドと見て間違いないだろう。芳一の耳がなくなったり出たりして造形が雑なのは、繊細に見えて、意外なところで大雑把そうなユキの鷹揚さの現れ、ということにしておこう。
運命の出会いを経て、愛を深めていく誠とユキだったが、ツーリングに出かけた先でユキが発作を起こし、やがて心肺停止になってしまう。医師による死亡確認が行われたのにもかかわらず、誠はユキの遺体を連れ出し、大学病院の敷地内にある「動物実験治療室」に飛び込む。鶏やヤギや猫が見守る中、なぜか上半身裸になって心臓マッサージをし、単にキスを楽しんでいるようにしか見えない“チュッチュ人工呼吸”を施して蘇生を試みる。
本作のクライマックスといえるこのシーンの、「殺すんなら俺を殺せー!!」という誠の叫び声は、当時テレビCMにも使用された。これを見て「いったいどんなドラマティックな展開が」と、胸を弾ませ映画館に走った当時のマッチファンは、このトンチキ展開に何を思っただろうか。「黒柳さーん!!」と何ら変わらないトーンの誠の「棒叫び」に自然界が反応したのか、なぜか大地震が起こり、時空がねじれたんだかなんだか知らないが、ユキは生き返る。
……と、ここまでさんざんネタバレしておいてなんですが、ここから先の結末は、見てのお楽しみ。ただ、大きな肩透かしと膝カックンが待っていることだけは保証する。そして、こんなに酔狂な作品に大真面目に取り組んでいた明菜と、八乙女似の子役の奮闘は称えておきたい。この秋、かかるトンチキ映画が許容された、昭和という大らかな時代に思いを馳せてみるのもいいかもしれない。
【作品情報】
『愛・旅立ち』(1985年公開)
2022年11月15日(火)21:30~24:00
2022年11月26日(土)22:00~24:30
CS東映チャンネルにて放送
監督:舛田利雄 脚本:笠原和夫、舛田利雄
配給:東宝
出演:近藤真彦、中森明菜、丹波哲郎、勝野洋、萩尾みどり、レオナルド熊、北林谷栄、吉行和子、コロッケほか
東映チャンネル・番組紹介(https://www.toeich.jp/program/1TT000004080/202211)