近藤真彦と中森明菜、元カップルがそれぞれ再始動! いま振り返る2人の“いわくつき”共演映画
では、ストーリーを具体的に見て行こう。親友を交通事故で亡くし、自らは九死に一生を得た(そして奇跡的に無傷だった)誠と、余命わずかと知らされ、孤独な入院生活を送るユキ。2人が正式に出会うのは、全編127分中、折り返し地点を過ぎてからなのだが、出会うより先に2人は“魂の対話”を重ね、互いの存在を感じ合っている(なんのこっちゃ)。ユキが心臓発作を起こすと彼女の魂が火の玉に乗り、誠の臨死体験のフラッシュバックに“アクセス”する、といった具合だ。
前半で描かれるユキの闘病生活。これがまた破天荒を極めている。身寄りがないうえに不治の病を抱えるユキの淋しさに同情した看護師たちが、彼女に子犬をプレゼントする。病室に犬。訓練されたファシリティドッグでもないのに、衛生上、社会通念上あり得ないが、こんな序盤でいちいち立ち止まっていてはツッコミ持久力がもたない。これが『相席食堂』(朝日放送)なら、千鳥の「ちょっと待てぃ!」ボタンの連打で、VTRが一切進まないことだろう。
ユキは怪談『耳なし芳一』がバイブルという、19歳にしては渋すぎる趣味の持ち主だ。同じ病室になった老婆・しげ(北林谷栄)は、「それはどんな話なのか」とユキに訊ねる。『耳なし芳一』を知らないお年寄りというのも珍しいが、オタクが推しについて語るとき特有の、立て板に水のごとき口調であらすじを説くユキの姿が熱い。そしてユキによる『耳なし芳一』の解説を聞きながら、しげは絶命する(なんで!?)。
ユキの「芳一フリーク」が嵩じて、ついに彼女の目の前に芳一が現れるシーンは、前半の大きなカタルシスといえる。芳一の姿はユキにしか見えない。どことなくHey! Say! JUMPの八乙女光に似た子役が口に綿を含み、目にカラコンを入れ、ゾンビ風メイクを施され、耳を隠しているはずなのにときどき出ちゃったりして、体当たりで芳一を演じている。この芳一に、非常に中毒性があり、年に一度ぐらいはこの映画を見直してもいいか、という気分になる。そして、実際なぜか年一ぐらいの頻度で『愛・旅立ち』はどこかしらで放送されている。
芳一と、彼の霊力で元気を取り戻したユキは病院を抜け出し、原宿へ。芳一が霊視を用いてユキの逆ナンを手伝ったり、空を飛んだり、動物園で虎に怯えて縮小したりする、84年(撮影時)の「最新特撮技術」を駆使したシーンにも、頬が緩む。また、ユキと誠に訪れる「臨死体験」の中、現れては消えていく「人生に関わった人々」の走馬灯が、自動車教習所の教習映像のようでジワる。