コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」
『笑点』を自主降板――二代目・林家三平は、「面白くないまま」大喜利を続ければよかったと思うワケ
2022/11/10 21:00
11月9日放送『徹子の部屋』(テレビ朝日系)にゲスト出演した三平は、『笑点』を自主降板したことについて、「未熟な自分は、もっと人生経験を積んで勉強する必要があると感じたから」と振り返っていた。どうにも真面目すぎるというか、ちょっとカッコつけているところがあるのではないだろうか。
面白くしたいなら、人生経験を積むよりも、共演している先輩に頭を下げ、アシストしてもらって“見せ場”を作ってもらうほうが効果的なはず。もしそれができないなら、「できないくせにできないと言えない」ムダなプライドが邪魔しているように感じる。それはお坊ちゃま育ちだからかもしれない。
番組名は失念したが、初代・三平は、テレビ進出に熱心だったと見たことがある。世間一般に「落語は演芸場で見るもの」と思われていた時代、落語界にはテレビを一段下に見る人が多かったという。しかし、テレビの台頭により演芸ブームが起きると、初代・三平はいち早くその流れに乗った。テレビは、芸人に与えられる時間が演芸場より短い中、「もう大変なんすから」など、テレビ用に“短時間でウケるためのネタ”を編み出したそうだ。
人がやりたがらないことをやれば、ライバルが少なくなるから自分に有利になる。けれど、いくらライバルが少ないといったからといって、ウケなければ何の意味もない――初代・三平はそんなふうに思っていたのではないだろうか。
テレビの時代を予見し、テレビに合わせたネタを作れる初代・三平の頭の良さは、いい意味での計算高さといえる。二代目・三平に足りないのは、人生経験ではなく、初代の持ついい意味のズルさともいえるのかもしれない。
最終更新:2022/11/10 21:00