コラム
“中学受験”に見る親と子の姿
コロナ禍で借金まみれに……母から「中学受験断念」を告げられた小6娘のその後
2022/11/12 16:00
ひかりさんはとても優秀な子で、塾でも最上位クラスに在籍。新6年生になっても、その位置をキープし続けていたという。
「夫も私もすごく喜んでいました。そのクラスにいればトップ校も射程圏内と、塾の先生から言われていたからです」
ところが、この新型コロナウイルスの感染拡大で事態は急変する。
「ひかりが6年生になるや否や、いきなりお店は休業に追い込まれて、途方に暮れました。テナント料、従業員の給与、開業時のローン返済に、住宅ローンも重くのしかかってきたのです。さまざまな手は尽くしましたが、八方塞りの状況に追い込まれ、本当に苦しかったですね」
そんな中、さとみさん夫婦は、ひかりさんに非情な通告をせざるを得なかったという。
「『ごめん、中学受験はさせてあげられない』と言った時のひかりの悲しそうな顔は忘れられません。ここまで頑張ってきたのに、しかも、親の強い勧めで始めたことなのに、結果も見ずして、途中棄権になるのですから……ひかりの気持ちを思ったら、胸が張り裂けそうでした」
ひかりさんは両親に、「わかった。私は大丈夫だから、パパママ、頑張って」とだけ返し、子ども部屋のドアを閉めたそうだ。翌朝、ひかりさんの泣き腫らした目を見たさとみさんは、「娘の顔を正視することはできなかった」と涙を見せた。