コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

コロナ禍で借金まみれに……母から「中学受験断念」を告げられた小6娘のその後

2022/11/12 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

写真ACより

 現在放送中のNHK連続ドラマ小説『舞い上がれ!』の中で、中学受験に関するシーンがあったのをご記憶の方もおられるだろう。

 主人公・岩倉舞(浅田芭路)の父親・浩太(高橋克典)が経営する工場の経営悪化に伴い、勉強が得意な舞の兄・悠人(海老塚幸穏)に私立中学受験は難しいと告げる……という展開だった。

 「いま工場はしんどうてな……。公立の学校で頑張るのはどうや?」と父親に言われた悠人が、「なんで今さらそんなこと言うねん! そんなアカンわ! 僕には計画があんねん! いい中学行って、そこで勉強頑張って、東大に入るんや!」と激怒するシーンに胸を痛めた視聴者も多かったのではないだろうか。
 
 結果的に経営は持ち直し、悠人は東大に進学したので万々歳だったが、このドラマにあるように、中学受験は金がかかる。中学受験、そしてその先に待ち受ける私立中高一貫校の学費は超高額。3年間の中学受験塾代+中高一貫校6年間の学費を合わせた場合、だいたい850万円にもなるのだ。

 たとえ、子どもが中学受験に前向きであったとしても、そもそも“必須”ではない受験だけに、最初から「ない袖は振れないので、公立中学に行って、高校受験で頑張って!」と親が言い渡すケースもあるだろう。

 一方、参入するにしても、その前に、我が家の経済状況と実際にかかっていくであろう学費のシミュレーションを行うことは「イロハ」の「イ」である。

 しかし、人生はシミュレーション通りに進むとは限らない。悠人のように、せっかく頑張って猛勉強をしていたのに、親の経済状況によって、突然強制ストップがかかることもなくはないのだ。

 特に今はコロナ禍。現実世界でも同様に、中学受験を断念せねばならなくなったご家庭は、決して少なくはないのが実態だと思う。

中卒の夫が娘に「学をつけさせたい」

 さとみさん(仮名)は夫と共にレストランを経営している。夫は名店と呼ばれる店での修業期間を経て、独立開業。腕の良さが評判を呼び、経営も順調。新居も購入し、高級な車も手に入れ、経済的には何の問題もなかったそうだ。

 そんな中、一人娘のひかりさん(仮名)が小学校に入学し、夫婦で子どもの教育をどうするか、真剣に話し合ったという。

「夫は若い時分に料理人の修業を始めたので、学歴としては中卒。夫自身、そのことにまったくこだわりはなく、私はむしろ夫の頑張りを尊敬していました。しかし、夫はひかりのことになると、『学をつけさせたい』と言うんです。それで、ひかりは低学年から、中学受験塾に入ることになりました」

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