『私は私のままで生きることにした』がアイドルファンに沁みるワケ――BTS・ジョングク効果で167万部の大ヒット
編集・B子 さて、『私は私のままで生きることにした』を読んだジョングクに、“次の本”としておすすめしたい1冊はある? 韓国のエッセイは一通り知っていそうだから、できれば別のジャンルがよさそうかな。
ライター・保田 じゃあ意外なところで、コミックエッセイ『プリンセスお母さん』(KADOKAWA)はどう? 作者の母「ママ子さん」を中心に、父や姉弟も含めた家族の面白エピソードを描いたコミックエッセイだよ。
編集・B子 『私は私のままで生きることにした』とは、全然内容が違くない? 絵柄的にも、かなりギャグっぽいけど……。
ライター・保田 そうそう、基本的には笑えるコミックエッセイだよ。でも、実は『私は私のままで〜』に通じるところがあると思う。というのも、ママ子さんのおふざけは、どれも「他人を貶めず自虐もしないで人生を楽しむ」っていう考えが徹底してるの。
作中にママ子さんの「いろんな不条理のなかでも生きていかなければいけない(略)自分の心だけは誰にも支配されない」っていう言葉があるんだけど、これって『私は私のままで〜』のまんまでしょ? こっちだって、200万部くらい売れていいと思う!
編集・B子 なんか、今回はすごい熱量で勧めてくるね(笑)。
ライター・保田 ママ子さんは子どもの頃に家族関係でつらい思いをしてて、深く傷ついた時期があるの。そんな過去を経て、親子や夫婦であっても人間関係は不確かなものだと思っているんだよね。このバックグラウンドを踏まえると、ママ子さんの面白エピソードにも、「人に何かを求めて行動するよりも自分がなりたい自分に近いと思う行動をしていく」(3巻より)というポリシーが貫かれているんだなって気づかされるよ。
編集・B子 普通のギャグ漫画だと思ってたのに、そんな奥深い話だとは……!
ライター・保田 もちろん、ほのぼのと笑えるエピソードがほとんどだから、楽しく読み終えるのが一番いいと思う。でも、もし人生に迷ったり、人と比べて悩んだりしてしまう人が読んだら、真摯な考えにユーモアをまぶして昇華されているこの作品が、きっと心に響くんじゃないかな。