『ザ・ノンフィクション』親の介護を離れて「自我が芽生えた」息子「ボクと父ちゃんの記憶2022前編 ~母の涙と父のいない家~」
一つの家族を見つめ続ける、という点ではダウン症のダンサーである優とその家族を見つめた「ピュアにダンス」シリーズもあるが、こちらは過去2年で年1のペースで放送されている。その点、林家はかなりのハイペースだ。
番組が国際的な賞を取ったこともあり、番組としては「林家推し」なのかもしれない。林家の場合「認知症」という、今日多くの人にとって自分の親、そして自分自身にとっても無関係ではいられないテーマを含んだ回ではあるが、林家のほかにも「その後」を取り上げてほしい過去の出演者は少なくない。番組は、どういう基準で「その後」を追う対象を決めているのだろう。
『ザ・ノンフィクション』に登場した人たちの「その後」
なお、番組が取材した人たちの「その後」について少し触れたい。19年10月放送「好きなことだけして生きていく 後編~伝説のシェアハウス解散~」では、開業資金を極力抑えて開店した喫茶店「しょぼい喫茶店」の様子が伝えられていたが、その後、店は20年2月に閉店したそうだ。時期的に考えて、新型コロナウイルスの流行とは無縁かと思われる(新型コロナウイルスによる初の緊急事態宣言発令は同年の4月)。
また、近年の『ザ・ノンフィクション』で最も話題沸騰となった回と言っても過言ではない、22年1月放送「結婚したい彼女の場合 ~コロナ禍の婚活漂流記」に登場した30代女性のミナミは、その後無事婚約に至ったと結婚相談所の植草氏が伝えている。
番組の取材に協力することでの謝礼はあるとは思うが、番組に出ることで、SNSやネット掲示板でさまざまな人に好き勝手なことを言われることを思うと(この原稿もそうだ)、番組にもう出たくない、という人も少なくないと想像する(出演した側が、実態と違うと放送後に番組側へ抗議したケースも複数ある)。
その中で4回も登場する林家は、番組側の意図と京子の意図が合致している幸福なケースなのかもしれない。
ただ林家放送回では、ナレーションが「家族一緒が一番大切」といった美談調にしようとしているように個人的には感じる。今回もその傾向はあった。実際は、もっと苦悩やいら立ちなど、さまざまな感情があるはずだろう。
しかし介護を終えた林家で、京子と大介が親子げんかをしていた際に、介護生活から離れ大介に「自我」が芽生えた、と触れたナレーションは、ハっとさせられる良い文言だと思った。
次週の『ザ・ノンフィクション』は今週の続編。感染症予防から面会がなかなかかなわなかった家族は佳秀とようやく面会となり……。
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