芸能
崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』

Netflix『D.P.-脱走兵追跡官-』に見る、韓国「徴兵制」の実態――「命令と服従」実体験を映画研究者が語る

2022/09/16 19:00
崔盛旭(チェ・ソンウク)

 2000年代に入り、社会全体に民主化が浸透するに従って、軍も「兵営民主化」のスローガンを掲げ、主に人権侵害の改善を目標に、さまざまな組織を立ち上げた。01年の国家人権委員会による軍隊実態調査会や、陸軍訓練所で起きた暴力事件をきっかけに、05年に設置された陸軍人権改善委員会などが代表的な例だろう。ただ、その成果が目に見えて上がっているとは言い難い。

 なぜならば、武装兵による銃乱射事件(05年の「38度線監視所内銃乱射事件」、14年の「江原道軍部隊銃乱射事件」)や、古参兵による集団暴行死亡事件(14年の「医務兵殺人事件」)など、世間を揺るがす惨事が後を絶たないからだ。ドラマでも、いじめられた兵士が銃を乱射する場面があったが、これまで起こってきた、あるいはいつ起こっても不思議ではない事件を描いたといえるだろう。

 個人の意思と関係なく、法という国家的装置によって生じる兵役の義務。何物にも代えがたい時間を否応なく捧げた結果、暴力やいじめに晒され、心に傷を負い、脱走せざるを得ない状況に追い込まれる。その結果、命を失うことになれば、これ以上の悲劇があるだろうか。

 ドラマでは、脱走という運命を分ける瞬間の象徴として、部隊の正門に引かれている「白い線」の場面が度々登場する。この白い線を、たとえどれほどの時間がかかったとしても、意味も必要もない軍隊にしなければならないと、強く感じた。

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