夏の風物詩「アウトドア系」万引きの実態とは? 万引きGメンが見たディスカウントストアでの犯行
(やるに違いない)
犯行に至ると確信して、防犯部長に連絡を入れた私は、3人の後を追いながら簡単に状況を説明して、至急応援に来てもらえるようお願いしました。これからキャンプに行くのか、3人はその間、大きな肉のパックや輸入物のハム、ソーセージ、スナック菓子などをカゴに入れていきます。ギラついた目で周囲を警戒しつつも、わざとらしくはしゃぎながら酒売場に入っていきました。
「あの人たち?」
数分後、棚の陰から3人の動向を見守る私の後方から、防犯部長が声をかけてきました。視線の先にいる3人の姿を見た途端に、あからさまに怯えて、身を縮めるようにしています。
「ちょっと危ない人たちに見えますね。暴れたら、どうしよう。大丈夫かな?」
「暴れるかどうかはわかりませんけど、あの様子からすると確実にやりますよ」
内線で店長を呼び出した防犯部長は、風除室にあるキャリーワゴンを遠巻きに見守るよう指示すると、続けて警察にも通報し始めました。
こそこそと通報を始めた防犯部長に気づくことなく、多数の缶ビールやハイボール缶、それにロックアイスまでカートに載せた3人は、レジ前にある有料の特大レジ袋を複数枚まとめてつかみ取ると、レジ列に並ぶように見せかけて売場通路に戻っていきます。歩きながらレジ袋を広げて、カート上にある商品を覆い隠して精算済みを装い、風除室のある出口方面の方に向かって歩いていきました。
(そろそろ出るわね)
身構えて出口方面に目をやれば、カゴやカートの回収係である制服警備員が作業をしており、それに気づいたらしい3人は足を止めて風除室の様子をうかがっています。棚の陰から目を離さないでいると、通報を終えたらしい防犯部長が追いかけてこられ、私の耳元でささやきました。
「交番の警察官が、書類を持って、ちょうど出たところだって」
この店から交番までは、自転車で5分ほどの距離らしく、まもなく到着する見込みのようです。タイミングよく警察官が来てくれることを祈りつつ、引き続き3人組の様子を見守ると、商品を満載したカートを売場に放置して、キャリーワゴンには見向きもしないまま外に出ていってしまいました。キャリーワゴンを放置している風除室のある出入口から、2人の警察官が入ってきてしまったのです。