『ザ・ノンフィクション』聞く耳を持たない父の息子は……「話を聞いてくれる人 ~空っぽの僕が生きる意味~」
客の話を淡々と聞く水野は、よい聞き手と思われるが、「え?」と疑問を抱いたシーンが後半にあった。自身の将来について番組スタッフから聞かれた際のやりとりを抜粋する。
「(夢は)ジャニーズデビューとか、コヤッキースタジオ(都市伝説情報を発信しているYouTubeチャンネル)に入るとか、YouTuberですね」
「(それに対し何かしているか、というスタッフの問いに対し)何もしてないですよ、あくまで、それは、小学生の夢みたいなものですけど」
別に水野はウケを狙って言った体ではない。水野は年齢を非公表としているが、大学卒業後メーカーで3年働き、2017年から聞き屋をはじめて5年とあり、見た目の雰囲気からも30歳くらいかとみられる。本当にジャニーズになりたい、というより、いわゆる世間的な「30にもなったら落ち着いて……」という風潮に反発したい気持ちの表れのように見えた。
この強気さは、水野のおそらくアラサーという年齢によるところもあると思う。この若さで自分のやっていることが評価されているのなら、発言も強気になるだろう。水野は著書『名古屋で見かける聞き屋の謎』(マーキュリー出版)もあり、今回『ザ・ノンフィクション』から取材された、というのも自信につながったはずだ。
『ザ・ノンフィクション』30歳のころは見えなかった“年齢”という要素
なお、「働かずに生きていく」の元祖的存在であり、シェアハウスのムーブメントを作った人でもあるphaについても過去にザ・ノンフィクションでは取り上げていたが、phaは40歳で11年運営してきたシェアハウスを解散している。
解散の原因について「年齢的なものもあるかもしれないですね。若いころは劣悪な環境で暮らしてること自体楽しかったりするけれど、だんだんただなんかキツくなってくる。飽きてくるというかしんどくなってくるみたいな」と話していた。
30歳のころはむしろ楽しめていたことが「中年の危機」を迎える40歳になると心境が変わってきて、きつくなってくる、というのは私自身42歳なのでよくわかる。ただこれは30歳のころにはわかりようもない感覚ではある。水野はどんな40歳になるのだろう。
次週の『ザ・ノンフィクション』は「ボクと父ちゃんの記憶2022前編~母の涙と父のいない家~」。50歳の時に、若年性アルツハイマー型認知症と診断された「父ちゃん」。認知症が悪化し、施設に入ったあとの家族の1年を見つめる。