天皇にとって、セックスは国事行為! 1,000年前から宮中に伝わる「すごい」エロティックな教え
「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます!
――前回から「天皇家秘伝のセックスマニュアル」ともいえる『医心方』「房内」について歴史エッセイストの堀江さんに語っていただいています。天皇家をふくむ、高貴な男女を対象にしたというわりには、かなり奔放な内容でびっくりしました。
堀江宏樹氏(以下、堀江) 性的にパワフルな人でなければ、良い後継者にも恵まれないということなんでしょうかね。『医心方』では男性がなるべく射精せず、数多くの女性と交わって、彼女たちに性の喜びを与えることが推奨されているわけです。男性はある意味「奉仕の性」に徹しなさいといわれているようなものですね。
しかし、現代人がエクスタシーという単語を聞いて想像する以上に、『医心方』で描かれる女性のエクスタシーは奇妙なまでに細分化がなされ、深い分析が加えられているのです。『医心方』「房内」の「九気第一」で語られる内容は、「女性は全身でエクスタシーを感じるものだ」という前提で書かれているようだと私には思えました。
キリスト教文化圏で男女がセックスしてもよいのは、夫婦が子作りを目的とする時だけでした。男性のエクスタシーは肯定されていても、女性が性的な快感をセックスで得ることは良いとはされない空気もありました。
しかし、古代中国、そしてその性医学の考えを輸入した古代日本では、今から1,000年以上も前に、女性のエクスタシーが多面的かつ多層的なものであると見抜いていたのは驚がくすべきことだと思います。たとえば「九気第一」の章では女性は「肺で(も)イク」みたいなことが書いてあるのです(笑)。
――肺が性感帯ってすごいですね。
堀江 おそらく相手の男性に強い魅力を感じてのことでしょうが、女性が「はぁっ」とため息をついて(=原文の「女人大息」)、生唾を飲み込む(=「咽唾」)と、「肺でイッている」=「肺気(はいき)」の状態となるのです。
ほかにも音を立てるほどに、男性と激しいキスをする(=「鳴面吸入者 心気来至」)のは「心気(しんき)」。つまり「心がイッている」状態。こういう描写が続き、足を男にからめつける(=「足拘人」)のが「筋気(きんき)」、男性のペニスをいじる(=「弄玉茎」)のは「血気」なども出てきます……。
――足を男にからめるのは、ネットスラングでいうところの「だいしゅきホールド」でしょうか。にしても、これって高貴な男性のお相手であるお姫さまを想定しているはずなのに、かなり過激でびっくりです。プリンセスは全身で達しまくっていたのですね……(笑)。