ウイスキー万引き夫婦、夫が「俺は関係ねえ」「うるせえ」と大暴れ! 妻に罪をなすりつけたワケ
犯行に至ることを確信して追尾すれば、何度も後方を振り返りながらフードコートの中に入った女性は、先ほど酒売場で言葉を交わしていた男性が座るテーブルに腰を下ろしました。未精算の商品をフードコート内に持ち込むことは、店内の規則で禁止されていますが、余計なトラブルになりかねないので、声をかけるわけにはいきません。
「これから払おうと思っていた」
「客を泥棒扱いするのか」
このような反論を封じるため、しっかりと犯罪が成立するまで、状況を見守る必要があるのです。少し間を置いてフードコートに入ると、入口脇のテーブルにリョウくんが座っており、フレンチフライをつまんでいました。ご丁寧に、私の分のアイスコーヒーまで用意してあり、ストローを咥えながら2人の動きを見守ります。
「お酒の棚取、全部見たわよ」
「ブツに幕を張っているし、間違いないですね。2人とも、めちゃくちゃ警戒しているから気をつけないと」
「目を合わせなければ大丈夫よ。なるべくゆっくり食べて、私たちを気にするようだったら、先に出て待ち受けましょう」
しばらくの間フードコートに留まり、すっかり安心した様子で駐車場に出た2人の後を追うと、黒いワンボックス車の前で足を止めました。トランクを開き、カゴにある商品を積み込み始めたところで、リョウくんが声をかけます。
「お店の者です。それ、お金払ってもらわないと困るんですけど」
「ああん? なんだお前?」
「この店の保安ですよ。お金払ってないのに持っていかれたら困るって言っているの!」
「はあ? 知らねえよ。よお、お前。金、払ってきたよな?」
しらじらしくも堂々と犯行を否認した男は、傍らでうつむく女に話を振って、我れ関せずといった姿勢を見せつけてきました。その一方、すっかり動揺した様子の女は答えに窮して、ただ黙って俯いています。万一に備えて女の腰元に手を置き、そっと声をかけると、急に顔を上げて言いました。
「お金、払っていないですよね? 認めていただけないなら、すぐに警察を呼びますけど……」
「はいはい、全部私がやりました。夫は関係ありません。これでいいんでしょう?」