ウイスキー万引き夫婦、夫が「俺は関係ねえ」「うるせえ」と大暴れ! 妻に罪をなすりつけたワケ
こんにちは、保安員の澄江です。
昨今、商業施設の大規模化が進み、どの店も商品管理に頭を悩ませています。取扱品目を増やし、売場面積が大きくなるほど、万引き被害は増え、防犯対策に難儀する実態があるのです。特に、専門店における被害は顕著で、大量かつ高額の万引き被害が頻発しています。換金目的の万引き常習者に狙われたことで、系列店舗を軒並み荒らされ、結果として数百万円にものぼる損害が生じたこともありました。
換金目的の万引き犯は、なるべく高額で、簡単に捌ける人気商品を大量に盗み出していきます。それを職業としている側面を持つため、買取相場や転売市場にも詳しく、捕まらないよう巧妙な手口を用いて持ち去っていくのです。昨今は、不況の影響から夫婦や家族による共犯関係が目立ち、家族間で罪を擦りつけ合う光景を目にすることもありました。
今回は、大型ディスカウントストアで捕らえた万引き夫婦について、お話ししたいと思います。
若者の万引きが増加する、夏
当日の現場は、S県の端にある総合スーパーY。都内から急行電車に乗って、およそ1時間。そこからさらに10分ほどバスに揺られたところに位置する2階建ての巨大スーパーです。この日の勤務は、午前10時から午後6時まで。2人勤務のため、この日のパートナーであるリョウくんと、従業員通用口の前で待ち合わせて現場に入りました。いつもなら駅で待ち合わせするところですが、今日はバイクで来たそうで、最近買ったのだと自慢されます。
「この間、高校生が走って逃げたんで、バイクで追いかけて捕まえたんですよ。ちょうどいいところに停めていたから、つい乗ってしまったんですけど。警察には、危ないからやめろって、すごく怒られました」
「そんなことがあったの? 確かに危ないわね。その高校生は、なにを盗んだのよ?」
「(値段が)高めの水着とゴーグルですね。友達の分まで盗っちゃって、被害は2万円を超えていました。足の速い子で参りましたよ」
「そんな季節よね」
夏休みが近くなると、若い子による犯行が増えるのは昔から変わらず、毛染めや水着、日焼け止めなど、季節感のある商品が狙われるようになります。男女を問わず、年齢が若いほど逃走率は高まるため、思いがけない事故が発生したこともありました。
追われて逃げる際は誰もが夢中で、後方を振り返ったりすることなどで周囲への注意が緩慢になるため、人を突き飛ばしたり、車や自転車などと接触してしまうことがあるのです。それは、捕捉する側も同様で、深追いすればするほど受傷事故に発展する恐れが高まります。犯行現場から距離が開くほど、被疑者の逃走意欲は増し、逃げ切りたいがために反撃してくることが多いのです。
業務開始後は、二手に分かれて、広い店内を巡回します。早い時間は、2階に向かうお客さんが少ないため、人の流れが多い1階を中心に警戒しました。広大な食品売場のほか、雑貨店やスポーツ用品店、メディアショップ、フードコートなどのテナントも多数入っているため、平日にもかかわらず人の出入りは激しく、少しも油断できない状況といえるでしょう。