花田優一のビッグマウスに見る「焦り」と「さみしさ」
何者かになりたいと必死になっているように見える優一。若者が、自分の生きる道を模索し、時に苦しむことは、一種の通過儀礼だが、彼の場合、父親である平成の大横綱・貴乃花の存在が大きいのだろう。
2021年2月4日配信のYouTubeチャンネル「街録チャンネル」に出演した優一は、「僕はまだ圧倒的に父の方が知名度も立場も上ですし」と、父親と自分を比較する発言をしていた。また、優一は、貴乃花に勘当されているというが、「勘当上等!」という感じではなく、ショックを受けているというか、さみしそうに見えた。私の主観でしかないが、挑戦的な物言いが目立つのは、優一のさみしさの裏返しのように思える。
優一は靴職人を名乗りながら、テレビに出たり、音楽活動を行っている。「女性自身」(光文社)が19年1月に、依頼された靴の納期を守っていないことを報じたこともあり、靴作りに集中しない優一を批判する声もあるが、「街録」では、靴作りに専念しない理由について、「お客様に靴一足作ったら、お客様一人に対してしか、その靴の良さとかを伝え(られ)ないじゃないですか」「でも絵とか音楽とかって色んなところに、絵だったら飾ってある所をみんなが見たりとか、音楽だったらいろんな所でかかってる音楽を聞いたりとかあるけど」と明かしている。つまり、靴作りだけでは世間に注目されないから、「専念しない」と言っているのだ。
20年に歌手デビューした優一は、『グッとラック』(TBS系)に出演した際に、「『NHK紅白歌合戦』に出場したいと言ったことは本気か?」という質問に対し、「歌手で一流の方でも出るのが難しいのであれば、ぼくはそこに出たいなと。もともと、歌が好きでこの職業をやらせてもらっている。(歌手に対し)最大級のリスペクトで、同じ舞台に立てるのであれば、立って見せよう」と大きく出た。しかし、優一もわかっている通り、『紅白』というのは簡単に出られる番組ではなく、今のところ、出場できていない。
優一が靴を作ることや歌うことが好きなのは間違いないだろう。しかし、彼が本当に求めているのは、平成の大横綱であるお父さん以上に、世間から称賛されることなのではないか。そしてその根底には、父から認められていないというさみしさがあるように思うのだ。
だからこそ、靴以外のジャンルに手を出し、トップを取ると大見得を切ってしまう。けれど、プロの世界は甘くないので、優一の願うような結果は、すぐには出ない。そうすると、次のジャンルに手を出す。その結果、世間からは「ビッグマウス」とか「何をやっても中途半端」「お父さんはすごかったのにね」と嫌なことを言われ、焦ってしまうという悪循環に陥っているように見える。
父親と比べられてしまう、頑張っているのになかなか認めてもらえないというのは、有名人の子弟でなければわからない苦しみかもしれない。何かすごい人にならなければと“肩書”を求めて、花田は焦っているようだが、その根底にある“さみしさ”につけこんだ悪い人に、どうかだまされませんように。人生は長いんだから、ゆっくりやってくれと思わずにいられない。