レジ袋有料化から早2年――万引きGメンが「大胆な犯行増えた」と警告
目が離せない気持ちになって行動を見守れば、特大サイズのエコバッグを棚から降ろした女の子は、それを引きずりながら衣料品コーナーの方に向かって歩いていきました。その目的を探るべく追尾すると、売場内の死角箇所で20歳くらいに見える肥満体の男性と合流して、手にあるエコバッグを差し出しています。
スーパーの衣料品コーナーで販売されている感じの派手な柄がプリントされた黒いTシャツに、膝までのショートパンツをはいた男性の脇には、商品であろう衣類を満載したカゴを上下段に載せたカートが置かれていました。それを見た瞬間、着手に至ると確信したのは、言うまでもないでしょう。
案の定、まもなくして洋服が並ぶ陳列棚の陰にしゃがんだ男は、エコバッグを床に広げてカゴにある衣類を乱雑に投げ込んでいきました。その間、女の子は売場を行ったり来たりして、見張りの役目を立派に果たしています。
(これは、悪いわ。親子ではなさそうだけど、どんな関係なのかしら)
体格のいい男が相手なので、すぐに防犯部長に電話をかけて応援を頼むと、まだ警察官たちと一緒にいるとのことで、すぐに電話口を代わられました。現在までの状況を説明しているうち、パンパンに膨らんだエコバッグをカートに載せた男が、女の子を引き連れて売場を離れていきます。
しきりと後方を振り返る女の子の目を避けるため、相当な距離を取りつつ、2人が向かう方向を電話口の警察官に伝えながら追尾すると、正面口を避けてフードコートの隙間にある通用口から外に出ていきました。
その進路を塞ぐ形で、2人の前に立ちはだかった警察官たちは、すぐに職務質問をはじめて単刀直入に切り出します。
「こんにちは。お店の警備員さんから通報があってね。その商品、お金払った?」
「…………」
「黙っていたら、わからないよ。これ、お金払ったの?」
「すみません……」
まさか、警察官に声をかけられるとは思っていなかったのでしょう。ひどく動揺して、なすすべなくうなだれた男は、その場に呆然と立ち尽くしています。
「この子は、あなたの娘さん?」
「いえ、妹です。こいつは関係ないんで、家に帰してやってください」
警察官の問いかけに、そう答えた男でしたが、確実な現認がとれているのは、女の子が棚取した特大サイズのエコバッグだけなので、帰すわけにはいきません。