レジ袋有料化から早2年――万引きGメンが「大胆な犯行増えた」と警告
当日の現場は、関東郊外に位置する大型ショッピングモールA。ここ数年、勤務するたびに捕捉がある現場で、前回来た時には3件の捕捉がありました。もれなく警察に通報して全員引き渡しましたが、どの事案も点数が多かったことから処理を嫌がられてしまい、ほどほどにしてくれと警告を受けています。
そのことから、この日は朝から正面口にパトカーが横付けされており、2人の警察官が店内を巡回していました。巡回といっても保安員の後を付け回すことが主たる目的で、私が不審者に目を止めるたび、視線の先にいる人物に対して姿を誇示して威嚇してきます。
「犯罪は、未然に防ぐのが、一番大事」
その大義名分をもって、保安員の仕事を邪魔するようなやり口で、店内を巡回しているのです。事件が続いている時や、警察行事があるときなどに実施されることが多いようで、捕まえるなら交代後にしてくれと、疲弊した顔見知りの警察官にお願いされることもありました。
「ご苦労様です。今日は、何時までいるつもりですか」
「ああ、どうも。ほかに大きな事件が起きない限り、交代まで巡回させてもらうことになっています」
「どうせなら、私がいないときに来てくれたらいいのに」
「…………」
どうにも仕事にならないので、事務所に戻って防犯部長に相談すると、少し意地悪気な顔で意外な指示を出されます。
「1人捕まえてみたら、どうかな。そうしたら引き揚げざるを得ないでしょう」
「そうなればいいですけど、ずっと付いてくるんですよ」
「それは、ひどいね。ストーカーじゃあるまいし。ちょっと私から話してみましょう」
2人で売場に戻り、防犯部長が警察官たちと話している間は、その様子を気にしながら、入店してくる人たちの姿も遠巻きに眺めて過ごします。すると、10歳くらいに見える髪の長い女の子が、1人で店に入ってきました。時計をみれば、午前11時を少し過ぎたところで、通常であれば学校にいなければならない時間です。
(学校は、お休みなのかしら?)
人着(対象者の容姿や服装のこと)を確認すれば、大きな王冠マークが描かれたピンクのTシャツと、派手な柄のスパッツの組み合わせが妙にうるさく、金色に染められた髪先と合わせて、どこかやんちゃな雰囲気を感じます。
(もしかしたら悪い子なのかもしれない)