『ゴールデンカムイ』はどちらに転ぶ? 映画評論家が語る「マンガの実写映画化」の成功作と失敗作
明治末期の北海道を舞台に、“不死身の男”と呼ばれる元陸軍兵・杉元佐一とアイヌ民族の少女・アシリパが、軍部や新選組の元隊士らと金塊争奪戦を繰り広げるマンガ『ゴールデンカムイ』(集英社)。今年4月、実写映画化決定が発表されるや否や、同作のファンを中心に大きな話題を呼び、ネット上では、早くも主要キャストの予想合戦が巻き起こっている。しかし、人気マンガの実写化だけに、「原作の良さを殺す作品になってほしくない……」といった不安の声も飛び交っている状況だ。
現在、実に多くの人気マンガの実写版作品が公開されている日本映画界。2022年公開作だけでも、『嘘喰い』『女子高生に殺されたい』『ホリック xxxHOLiC』『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』『キングダム2 遥かなる大地へ』など枚挙にいとまがなく、ある程度の集客を見込める人気マンガの実写化は、今後も盛んに行われると予想される。
しかし、原作ファンを含め、多くの観客から支持を受け、ヒットを記録する成功作がある一方、原作の良さを生かしきれず不評を買い、興行的に結果を残せなかった失敗作もある。果たして、『ゴールデンカムイ』はどちらに転ぶのか――。今回、映画評論家・モルモット吉田氏に、「成功した/失敗した」と思う人気マンガの実写版映画の例を挙げてもらいながら、その成功の条件を考えてみたい。
『ドカベン』『こち亀』が実写化に成功したワケ
日本映画界における人気マンガの実写化は、ここ最近に始まったわけではなく、吉田氏によれば1970年代にはすでに多数制作されていたという。当時の作品から『ドカベン』(77年)『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(同)を、成功例に挙げた。
「この2作品は、制作陣も俳優陣も、『マンガをそのまま実写に置き換える』ということに徹している作品。『ドカベン』の鈴木則文監督は、“子どもが夢中になるマンガの実写化は、そのままでやらなくてはいけない”といった明確な指針を持って制作にあたり、実際に、現場にマンガを持ち込んで、俳優に『このコマと同じ表情を』と指示していたそうです。『こち亀』もまた、主人公・両津役を演じたせんだみつおが、両津のトレードマークである太い眉をして、オーバーな表情を見せるなど、マンガからそのまま飛び出したような演技をしています。現実ではあり得ない、不自然な演出や演技ではあるのですが、“マンガそのまま”なので、原作ファンから見ても納得のできる出来になっていたと思います」(吉田氏、以下同)