カルチャー
ディズニーリゾート大改革を語る【後編】

東京ディズニーリゾート「有料ファストパス」の問題点! USJ「Eパス」のような“高額化”も……テーマパーク専門家が警鐘

2022/06/05 16:00
中島恵(明治大学兼任講師)

「夢の国」は裁判も抱えている(C)サイゾーウーマン

 良くも悪くも“大改革”が進むTDRだが、その裏では「労働問題」の火種がくすぶっており、裁判も起きている。原告は、TDLで着ぐるみを着用してショーに出ていた出演者の女性で、18年にOLCを相手に「パワーハラスメント」と「安全配慮義務違反」を訴えた。

 具体的には、ゲストに無理やり手の指を折り曲げられて負傷し、被害届提出と労災申請を求めると、上司から「君は心が弱い」という発言を受けたほか、職場ではスタッフ間で「死んじまえ」「ババアはいらない」といった暴言も飛び交っていたそうだ。

 今年3月29日には、千葉地裁(内野俊夫裁判長)がOLCに対し、88万円の支払いを命じる判決を言い渡し、OLC側が敗訴に。原告の女性が、判決後の記者会見で「今もディズニーというコンテンツを愛しています」と述べたのが印象的だったが、一方でOLCは判決を不服とし控訴している。

 TDRの話題といえば、ポジティブなものばかりだったのも今は昔。今回の裁判もそうだが、今年1月発売の『ディズニーキャストざわざわ日記――“夢の国”にも☓☓☓☓ご指示のとおり掃除します』(笠原一郎著、フォレスト出版)という本がヒットしたのも見逃せない。

 本書は、元カストーディアル・キャスト(清掃担当者)が、8年間の勤務で経験したさまざまな“苦労”を明かした1冊。これまでのディズニー本といえば「ディズニー礼賛」一色で、とにかくその素晴らしさを褒めちぎるものばかりだったが、17年に筆者が『ディズニーの労働問題―「夢と魔法の王国」の光と影―』(三恵社)を上梓し、そして今年についに、「元キャスト」がTDRのネガティブな情報を発信し、それが話題になるという新しい流れが起きている。

 テーマパークはなんといっても人気商売。TDRは今“大改革”で大忙しだろうが、内部からの“告発”によるイメージ低下にだけは気をつけてほしいものだ。

中島恵(明治大学兼任講師)

明治大学兼任講師。ディズニーランドやユニバーサル・スタジオを中心にテーマパークの経営戦略の研究をしている。『なぜ日本だけディズニーランドとUSJが「大」成功したのか?』『ディズニーの労働問題 ―「夢と魔法の王国」の光と影―』『テーマパーク事業論 ―プロデューサーの仕事内容―』(いずれも三恵社)など著書多数。

最終更新:2022/06/05 16:00
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