“女優”万引きGメンが激怒した「卑劣な盗撮犯」、その後味の悪い結末
事務所に連れていくものだと思っていましたが、なぜだかこの場に警察を呼ぶというので、私は男に抱きついたまま、警察官の到着を待ちます。店の人を呼ばれて観念したらしく、すでに勢いを失くしてはいますが、手を離せば逃走される気がしてなりません。
待つこと数分、ようやくに到着した警察官に被疑者の身柄を引き渡すと、その場で逮捕されることになり、被害者の方と警察署に向かうことになりました。犯人を見つけたのは美智子さんですが、初めに声をかけたのは私で、犯行状況の一部始終も現認していることから、私だけで事足りると判断されたようです。
警察署に向かう道中、パトカーの後部座席に被害女性と並んで座ったので、落ち着かせるべく声をかけてみました。
「びっくりしたでしょう? 大丈夫ですか?」
「もう怖くて、まだ震えが止まらないですけど、大丈夫。自分では気づいてなかったので、捕まえてもらってよかったです。本当にありがとうございました」
被害女性は、26歳。現場となった書店には、待ち合わせまでの時間潰しのために立ち寄られたそうで、こんな目に遭うとは想像もしていなかったと話しています。
「予定があったのに、こんなことになっちゃって、なんだか申し訳ありません。相手の方とは、ご連絡つきましたか」
「はい、警察署まで来てくれることになりました」
「それなら、よかった。こんな日は、誰か一緒にいてもらったほうが安心ですよね」
「はい……。でも、すごく怒っていたから、ちょっと心配なんです」
話を聞けば、待ち合わせの相手は婚約者で、犯人に対する怒りが尋常じゃなかったとのこと。警察署で暴れたりしないだろうかと、被害に遭いながらも余計な心配をしておられました。ちなみに犯人は、店の近所にある会社に勤める34歳の男で、「妻が妊娠中で寂しかったから」と、犯行の動機を供述したそうです。
すべての逮捕手続きを終えて店に戻ると、まもなく閉店の時間を迎える店内は閑散としており、美智子さんを探しているうち店内のBGMが「蛍の光」に切り替えられます。電話をかけても出ることなく、どうにも見つからないので総合事務所に向かうと、60代と思しき店長と話している美智子さんの姿を見つけました。何かを店長に褒められているような雰囲気ですが、よく見れば美智子さんの手は両手で握られており、可愛らしい顔が引きつっています。