“女優”万引きGメンが激怒した「卑劣な盗撮犯」、その後味の悪い結末
母娘を装い、少しだけおしゃべりをしながら各階の巡回をしていると、3階から4階に向かうエスカレーターに乗り込もうとしたところで、美智子さんに腕をつかまれました。
「待って、あの人!」
すぐに足を止めて視線を上にやると、ワイシャツ姿の男がスマートフォンを右手に屈んでおり、前に立つ女性の足下からスカートの中を狙っていました。足音を立てないまま、エスカレーターを駆け上がった美智子さんは、男の後方から犯行を現認すると大きな声で叫びます。
「ちょっと、あんた。なに撮ってんのよ!」
「ギャアア!」
被害者である女性が叫び声に反応して振り返ると、男は前後を挟まれ、行き場を失くし、被害女性を押しのけてエスカレーターを駆け上がって逃走しました。大きく回り込んだ男が、下りのエスカレーターに乗って降りてくる気配を感じたので、先回りして階下の踊り場で待ち受けます。
するとまもなく、男は上方から姿を現し、左手で手すりに触れてバランスを取りつつ、右手でスマートフォンを操作しながらエスカレーターを駆け下りてきました。画面操作に集中しているようで、私に気付いている様子はありません。降り口を塞ぐようにして待ち構えて、視線を上げて踏み出した男の腹に向け、タックルするように抱きつきます。慌てて逃走を図る男に引きずられながら、私は用件を言いました。
「ダメ、逃げないで。あなた、盗撮していたでしょう」
まるで私の存在を無視するように、何も答えないまま前進を続けた男は、スマートフォンの操作もやめようとしません。明らかに証拠を隠滅されていますが、手を離せば逃げられてしまうことになるので、美智子さんが到着するまで必死にしがみついて足を止めます。
「ちょっと、あんた。なに消しているの。いい加減にしなさいよ」
揉み合う中、執拗に画面操作を続ける男の手首を掴んだ美智子さんは、手にあるスマートフォンを叩き落すと、大声で叫びました。
「すみません。この人、痴漢です。誰か手を貸してください」
男に抱きつきながら周囲を見渡すと、被害女性が売場の方から男性店員を連れて走ってこられるのが目に入り、少し安心したことを覚えています。
「おい、暴れるなよ! とりあえず警察呼ぶから、おとなしくしていろ」