『エシカルフード』で目からウロコ! 日本の食産業の問題点は、買い物ひとつで変わる?
印象的なところを挙げたらキリがないのだけれど、まず「オーガニック(な農業)」という概念のとらえ方が、ヨーロッパと北米、そして日本では大きく異なっている」という点に膝を打った。日本では安全性が高く、健康に良さそうなイメージであるのに対して、ヨーロッパでは有機物循環を大切にする持続可能なスタイルを指す、と。
「ヨーロッパは利他的な、アメリカや日本は利己的な見方とも言える」という表現には射られた思い。そう、利己ではなく利他を考えていこう、その回数をちょっとでも増やしていこうというのが、エシカルな消費観点そのものに思える。15ページに書かれてある食品トレーサビリティの考え方とあわせて、ぜひ多くの人に読んでほしい。
そしてやはり知っておきたい、日本の問題点。水産業における資源管理や、エコラベル普及に関してのこと。日本の家畜は質や安全性だけでなく、エシカルに育てられているのか? また、輸入大国日本は「買い叩き」をしていないか、フェアな取引をしているだろうか?
食品ロスに関しては、国民の「もったいない精神」に依りかかりすぎで根本的解決を目指していない現状も語られる。そして何より“身近”とも言えるブラック労働の問題……。先日も大手寿司チェーン店の元店長が自殺を図ったニュースが流れたばかりである。従業員を苦しめる店を選ばない消費者で私はありたい。
食に興味関心のある方なら、どこかにひとつは必ず問題意識を刺激される点が見つかると思う。まずはそこを軸に、情報を集めてみてはいかがだろう。そんな良いきっかけを本書はきっとくれるはずだ。
日々の買いものひとつでも、良い取り組みをしている生産者や食品業者を応援することもできるし、働く人や取引先のことを考えないメーカーと関わらない選択もできる。そういう選択幅の広い人が増えてくれば、エシカルな社会はより早く近づいてくる。
白央篤司(はくおう・あつし)
フードライター。「暮らしと食」をテーマに執筆する。 ライフワークのひとつが日本各地の郷土食やローカルフードの研究 。主な著書に『にっぽんのおにぎり』(理論社)『自炊力』(光文社新書)など。
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