コラム
オンナ万引きGメン日誌
「先輩の引退式があって……」バイク用品を万引きした少年に、店長が“愛ある一喝”を放ったワケ
2022/03/26 16:00
お揃いの物を盗むのは、少年万引きによくあること。申し合わせていたかのように、同じ手口で同じものを盗んだ2人は、目的を達成したらしく、何ひとつ買うことなく店を出ていきました。声をかけるべく外に出ると、早速に盗品を取り出して駐輪場で取り付け作業を始めたので、万全を期すために電話で店長を呼び出して立ち会ってもらいます。
声かけは、現認者(犯行を目撃した者)である私がするつもりでいましたが、怒りが積もっていたらしい店長に先を行かれました。その怒気に圧倒されたらしく、すぐに作業の手を止めた2人は、抵抗の素振りを見せることもなく、今にも泣きだしそうな顔で店長を見つめています。重苦しい雰囲気に耐えかね、話を進めるべく少年たちに声をかけると、まだあどけなさの残る表情でこう返されました。
「ねえ、君たち。これを買えるだけのお金は持っているの?」
「いや、2,000円くらいしか持っていないです」
「おれは、3,000円くらいしかないです。ごめんなさい」
拍子抜けするほど素直に対応してくれたので、被害品を各々の手に持たせて事務所まで連れていこうとすると、ほかの仲間たちがバイクに乗ってやってきました。友人を取り囲む私たちの様子を見て、すべてを察したらしく、声もかけてきません。沈黙の友人に見送られながら、2人を事務所に連れていき、粛々と事後処理を進めます。