『ザ・ノンフィクション』新人にはつらい人事ローテーションの不実施「新・上京物語2022 前編 ~18歳 夢のあとさき~」
こうした状況を見て思うのが、ホール担当の人材を最初から雇えばいいのに、ということだ。レストラン大宮に限らず、千春が就職活動で訪ねた別のレストランでは、「厨房担当」と募集をかけておきながら、実際話が進むと、厨房は“完成された料理人”しか働けないと話があったと、千春の父親は話していた。募集要項で期待を持たせておいてひどいレストランだが、こんなだまし討ちのような手口を使わなくてはならないほど、ホール担当者というのは集まりにくいのだろうか。
コロナ禍で飲食の求人は大きく減っていると番組内で伝えられていたが、一方で、ホールは売り手市場なのだろうかとも思う。客としても本当は厨房に入りたいのに、と無念さを胸に秘めたまま接客業務を務めている人より、いきいきとホールで働く人から食事を出されたい。
「人生設計」の功罪
千春と楽壱の通った高校では、「いくつまでにこの調理技術を習得し、いくつまでに自分の店を持ち……」といった人生設計を授業で書かされたという。二人とは別の学校を出たあかりはそのような授業はなかったと話していたが、千春と楽壱はその人生設計をかなり意識しているように見えた。
ただ生きていると日々の生活に追われ、気が付けば1週間が終わり、気が付けばもう3月も終わりかけているし、気が付けば1年が過ぎ、そしてこの調子で気が付けば一生も終わっていくだろうから、「人生設計」があること自体は非常に良いことだと思うし、高校生にその先の人生を意識させる、というのはとてもいい教育だと思う。
一方で、この「人生設計」が千春を余計焦らせているのではないか、とも思った。当たり前だが設計図通りに人生は進まない。コロナウイルスのような自力ではどうしようもない要因もあるし、自分自身の考えや思いも、高校生の頃から当然変わっていく。
人生設計は自分の人生を豊かにするためのものであり、人生設計に合っていないことが自分をひどく苦しめるようなら、本末転倒な気がする。
かといって、ゆるい人生設計ならないも同然で、日々の生活にあっけなく流されていってしまうだろう。どういうのが良い「人生設計」なのだろうと考えてしまった。
次週は今週の続編。半年を経てようやく調理担当になれた千春だったが……。