中国アイドルオーディション番組『偶像練習生』大ヒットの功罪ーー政府の「推し活」規制に、現地ファンの“意外な本音”
yumeさんの話からもわかる通り、「推し活」に規制はあるものの、ファンのあり方や、「推しを布教したい」というファン活動の根本が変わることはまずない。
yumeさんが推しているAさんはすでにデビューしているため、アイドルとその後援会にとっては、応援活動の方法を見直し、派手な動きをしていなければ、規制があっても問題なくやり過ごせると思う。それに、今回の「推し活」規制の結果を見ると、ファン向けのアイドル人気ランキングが撤廃され、後援会運営のSNSアカウントがBAN(強制削除)されるといった処置は多いが、罰金などの処罰はない。
そうなると正直、ファンたちの推しを応援したい気持ちは変わらないだろう。たとえSNSのアカウントが消されても、いくらでも転生して復活するし、規制に沿った“新しいゲームルール”に適応すればいいだけの話だ。規制を破ってしまっても問題ない、とまでは言えないが、「推し活」への影響は限定的だと筆者は考えている。
最近の中国アイドルブームで初めて中国の芸能事情に触れた方々は、このような突如の規制に戸惑うかもしれない。しかし、中国出身の筆者にとっては、むしろ何かしらの規制が入ってくるという前提で中国のコンテンツ全般を見ていたので、「なるほど、今回はアイドル業界の番になったか」というのが正直な感想だった。
(後編につづく)
■はちこ
「現代中華オタク文化研究会」サークル主。小学生の頃、中国語吹き替え版の『キャプテン翼』(テレビ東京)で日本のアニメを知り、中学生の頃『ナルト』(同)で同人の沼にドハマり。以来、字幕なしでアニメを見ることを目標に、日本語学科へ進学。アニメをより深く理解するには日本の文化や社会の実体験が不可欠だと考え、2011年来日。名古屋大学大学院修士課程を修了後、都内勤務。現在も継続的に中華オタク関係の同人誌を執筆している。