オダギリジョーは「テレビドラマの異物」? 朝ドラ『カムカムエヴリバディ』で注目集める存在感
(初出:2014年5月14日)
仮面ライダー俳優から個性派へ、アイドル俳優から実力派へ――ドラマでの若手俳優の起用法は、ここ10年で大きく変化した。ジャニーズとイケメン俳優の現在の立ち位置と魅力を、話題の起用作から読み解いていく。
『極悪がんぼ』(フジテレビ系)、『アリスの棘』(TBS系)、そして『リバースエッジ 大川端探偵社』(テレビ東京)と、今期はオダギリジョーの主演作が三本も続いている。中でもオダギリの個性が、最も生かされているのが『リバースエッジ 大川端探偵社』(以下、『リバースエッジ』)だ。
本作は「週刊まんがゴラク」(日本文芸社)で連載されている、原作・ひじかた憂峰、作画・たなか亜希夫の同名漫画をドラマ化した作品だ。浅草にある大川端探偵社には、毎回さまざまな依頼人が訪れる。物語は、調査員の村木(オダギリジョー)が依頼を受けて浅草の街をさまようことで、街と人が持つ裏の顔を知るという大人のおとぎ話。監督・脚本は大根仁。テレビ東京のドラマ24ならではの作家性の強い作品に仕上がっている。
『リバースエッジ』の演技について、オダギリは「テレビブロス」2014年4月26日号(東京ニュース通信社)のインタビューで「説明的な芝居を一切省いて、できるだけ最小限の芝居で伝えることはできないか」と思い、普段よりも「芝居をいかにしないか」ということに気をつけたと語っている。本作におけるオダギリの役割はゲストを生かすホスト役のため、存在を激しく主張しないオダギリの演技は、適材適所だと言える。
また、同インタビューの中で、オダギリは、テレビドラマは放送時間帯によっては説明的な要素を芝居にプラスすることもあるのに対し、映画の場合は説明的である必要がないので、何も気にしないで演じていると語っている。なるほど、確かに『リバースエッジ』に比べると『アリスの棘』の芝居は、表情の変化や声のトーンによる喜怒哀楽の表現が比較的わかりやすく、演技のさじ加減を微調整しているのがよくわかる。同時にこの発言は今のオダギリが役者として抱えているジレンマを表しているように思える。
自然体やナチュラルという言葉で表されるような、まるで演技をしていないかのような脱力系の演技ほど素晴らしいという考えには必ずしも同意はしないが、それが映画やテレビドラマにおける役者の演技を語る際の大きな指標となっていることは確かだろう。おそらく浅野忠信あたりから脱力系ナチュラル演技は賞賛されるようになり、松田龍平、加瀬亮といった線が細いイケメン俳優の得意とする演技のパターンとして定着していったのだが、そんなナチュラル演技の頂点に君臨するのがオダギリジョーであることは間違いないだろう。