コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験、本番直前に「やめる」と言い出した息子! 母親が選んだ驚きの対処法とは?

2022/01/23 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

写真ACより

 今年もコロナ禍の中での受験本番となってしまったが、中学受験では、いよいよ東京・神奈川受験が始まる。長きにわたった受験生活も最終コーナーに差し掛かかり、本番を目の前に、武者震いをして勇み立つご家庭も多いことだろう。

 一方で、本番直前のこの時期に、子どもから「受験をやめる」と言われることもないわけではない。一昨年、こういうケースがあった。受験を2週間後に控えた詩音くん(仮名)が突然「受験はしない」と言い出したというのだ。

 親は驚いて、その理由を尋ねたそうだが、もともと、口数が少なく、物静かな息子からは要領を得る答えが聞けず、私に「どうしたものか⋯⋯」という相談を寄せてくださった。

 母親である理沙さん(仮名)は「夫は『怖くなって“逃げ”に走っている。こんなことじゃ、少しの困難でも、逃げるだけの人間になってしまうから、受験をしないなんて言語道断!』と激怒している。私もできれば、受験してほしいが、無理やりさせるもの、どうなんだろう? という迷いがある」とおっしゃる。

 勝負をしたほうがいいのか、やめたほうがいいのかという悩みは中学受験には付きまとう問題である。それは、受験せずとも義務教育という名の教育の機会が保障されているので、中学受験自体はやってもやらなくても、どちらでも構わないという「任意」の受験であるからだろう。

 ただ、親の立場で言えば、これまで長きにわたって、金銭的にも時間的にも肉体的にも「受験一色」という日々を過ごしてきて、最後の最後に「不参加」という状態は受け入れがたいというのもよくわかる。

 詩音くんの父親が懸念する「困難から簡単に逃げるような生き方をしてほしくない」という気持ちも理解できる。

 しかし、母親である理沙さんの言葉もまたもっともだろう。やはり、子どもの人生は子ども自身のためにあるので、その生き方の選択も子どもの気持ちに添いたいという親心。

 私は、これまでも数々「受験をやめたほうがいいか、どうか」という質問に答えてきたが、それは例え受験直前であったとしても、最終的には「子どもの意思を尊重せよ」派である。しかし、これには、ひとつだけ条件がある。

「人生において重要な決断をする時は一呼吸置く」ということだ。

 これは、周囲から煽られている時、あるいは疲れ切っている時、ネガティブな感情に覆い尽くされている時には大きな決断を下すのは避けるという意味。

 詩音くんの場合、本人がその理由を語らないということだったので、なおさら、一呼吸置くことを提案した。

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