日テレ『上田と女が吠える夜』に感じた、人を叩きすぎない配慮――若槻千夏の“塩梅”に感嘆したワケ
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今週の有名人>
「それはできるよ、そのくらいはイケる」若槻千夏
『上田と女が吠える夜』(1月6日放送、日本テレビ系)
以前、『週刊さんまとマツコ』(TBS系)で、明石家さんまが「今の時代に『から騒ぎ』はできない」と話していたことがある。『から騒ぎ』とは、1994年から2011年まで放送されていた『恋のから騒ぎ』(日本テレビ系)のことで、さんまと多数の一般人女性がテーマに沿った恋愛トークを展開するというものだった。元TBSアナウンサー・小林麻耶や女医タレント・西川史子ら、この番組から巣立ったタレントは多い。
確かにさんまの言う通り、今の時代にあの番組を放送するのは難しいだろう。若者が恋愛に興味を示さないといわれている時代に、恋愛をメインテーマに持ってくるのは得策と思えない。それに、『から騒ぎ』ではきれいな女性を前列に、個性の強い女性を一番後ろの列に座らせていたように私は感じた。フェミニズムの意識が高まる今の時代に同じようなことをしたら、「女性のルッキズムを推奨している!」とSNSで炎上する可能性もあるだろう。
また、トークの内容自体も、今の時代には批判を浴びそうなものばかりだった。バラエティ番組なので出演者の発言がすべて真実とは限らないが、男性に買ってもらったプレゼントの金額で女性としての価値をはかったり、好きな男性のために料理を頑張る、ベッドで男性を奉仕するといった発言は、フェミニズムの視点からはもちろん、ジェンダーフリーの時代にもそぐわないと批判が来るのではないか。
『恋のから騒ぎ』では、「私が忘れられないオトコ」とか「私が許せないオンナ」というように、トークテーマに性別が明記されることが多かった。これを今の時代に再現すると、たとえば女性出演者が自分の恋のライバルにあたる女性について悪く言った場合、「オンナによるオンナ叩き」と見なされたり、「“オンナは陰湿”という思い込みを持つように促している」という印象を持たれ、苦言が出る可能性は高い。こうした理由から、やはり「今の時代にはできない」番組といえるだろう。
しかし、「作り方」「やり方」次第では、こういう人の愚痴を言う番組は、まだまだイケるのではないかと思えてきた。1月6日放送の『上田と女が吠える夜』(日本テレビ系)は、上記の難しさをうまくクリアしたように感じる。