『最愛』5つのキーワードで読み解く! 新薬「850」の数字、弁護士バッジや白川郷の意味を徹底解剖
最終話エンディングの手をつなぐシーンがまさに象徴的ですが、「つなぐ」あるいは「結ぶ」「継ぐ」、そして「守る」が『最愛』の主要テーマになっていました。会社を母・梓(薬師丸ひろ子)から「引き継ぎ」、会社を「守る」ための最善策を取ることになった梨央。
創業家が経営から退くという決断に至り、その辞任会見に臨む直前、兄・政信(奥野瑛太)のネクタイを梨央が締め直してあげるシーンは、個人的にはこの最終回で最もぐっときた場面で、長らく続いたきょうだいの確執が完全に解消され和解し和合、つまり「結ばれた」とわかる1コマでした。
図像学的に、ネクタイはそのまま結びの象徴であるとされますが、それでいえば、第2話、白山大学陸上部で大麻事件が発生し寮に取材陣が押し寄せたとき、大ちゃんが優くんをその喧騒から遠ざけようと連れ出し散歩するシーン。大ちゃんが優くんのほどけた靴紐を「結び直す」のですが、その光景は印象的でした。
思えば大ちゃんは学生時代、タスキを「つなぐ」駅伝選手。このように随所に「結び」のシーンが挿入されていたのです。結びの象徴はもちろん「人と人を結ぶ」ですが、「天と地を結ぶ」、また「過去と未来を結ぶ」表しでもあり、その場合、結び目は「現在(現世)」です。
また最終回、大ちゃんと梨央が揃って登場するのはたったの2回。しおりの葬儀と朝宮家のお墓参りの霊的なシーンで、偶然にもいずれも2人並んで階段を下りていきます。これは2人が過去へと向かう、つまり「世界を変える30代」でも刑事でもない「あの頃の2人」に向かうということの表しでしょう。
特に2回目は、白川でのお墓参りのあと、マフラーを巻いた(結んだ)2人が手をつなぎ「ちっちゃい手やな」「あったかい手やな」と互いの手の感触(実体)を確かめ合う……やっとのことで2人が結ばれたことを示唆して終わるのです。