『ザ・ノンフィクション』やる気を見せても、すぐに「逃げ出す」人たち「スマホとホームレス ~無料Wi-Fiに集う若者たち~」
3人の生活困窮者が番組では紹介されていたが、今後について前向きな様子が映像で確認できたのは佐藤だけだった。山本は、新しい家も就職先も見つけたものの長く続かず、連絡を絶ってしまう。
山本は番組スタッフとの受け答えなどちゃんとしている青年だったので、突然の放り投げるような行動との落差に驚いてしまった。
しかし『ザ・ノンフィクション』では、生活困窮者とそれを支援する人たちを取り上げた回が過去に何度もあり、思い返してみると、 残念ながら今回のような「支援される人の雲隠れ」は「あるある」ですらある。
さらに、そういった人たちは「確かにやりかねない」と危うさを感じさせる人は少なく、山本のように、むしろ「ちゃんとしてそう」な人が多い。そんな人が、いきなり投げやりな態度になっていき、投げ出し、関係者はびっくりしてしまうーーそんなケースは、過去に番組で何度も見ていた。
「助けてくださいと手を伸ばし、支援者のバックアップで生活は再建された。めでたしめでたし」となることのほうが、今までの番組を見る限りは少ないのだ。
「逃げる」選択肢を選ぶのがとにかく早い
今まで『ザ・ノンフィクション』で見てきた「逃げ出す人たち」は、最初はやる気を見せる。その気持ちに嘘はないと思うのだが、そこから逃げ出すまでが驚くくらい早い。つらいこと、困難なことに適応、対応する力が弱く、「逃げる」という選択肢を選ぶのが早すぎるのだ。
つらいことや困難なことは誰だってイヤだと思うが、そこで「ふんばってみる」「愚痴をこぼしつつ乗り切る」「相談する」「転職する」など、ほかの選択肢もあるのに、いきなり「逃げる」を選んでいる印象だ。
「逃げる」は重要な選択肢だと思うが、「逃げ癖」がつくのはまずいし、放り出すような逃げ方では信頼を失ってしまう。
佐々木は連絡のつかない山本を案じていた。逃げ出してしまうのはあるあるすぎていちいち怒ったり失望したりしていられないのだと思うが、それでも手を差し伸べ続ける支援者の方たちの日々の活動を尊敬する。そして同時に、「逃げ癖」がついてしまうことの怖さを改めて感じた
次週は「この町で人生を変えたくて ~結婚とお金と生きがいと~」。急速な発展を続ける中国・深圳。1700万人に膨れ上がった人口の平均年齢は33歳。活気あふれるその街でバーを営む「ゆき」のもとを訪ね、深圳で暮らす日本人たちの姿を見つめる。