サイゾーウーマン芸能韓流『サバハ』に見る韓国人の宗教的心性 芸能 [連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 『イカゲーム』のイ・ジョンジェ主演! エセ宗教問題を扱ったオカルト・ミステリー『サバハ』に見る韓国人の宗教的心性 2021/10/29 19:00 崔盛旭(チェ・ソンウク) 崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』 近年、K-POPや映画・ドラマを通じて韓国カルチャーの認知度は高まっている。しかし、作品の根底にある国民性・価値観の理解にまでは至っていないのではないだろうか。このコラムでは韓国映画を通じて韓国近現代史を振り返り、社会として抱える問題、日本へのまなざし、価値観の変化を学んでみたい。 『サバハ』 『サバハ』(Netflix) 今から30年以上も前、入隊を控えた冬のことだ。ソウルの繁華街・鍾路(チョンノ)を歩いていると、若い女性から突然「あなたは“ド”を知っていますか?」と声をかけられた。そして「天の“ド”」やら「人の“ド”」やら長々と並べ立てられた挙げ句、運命を占ってあげるからと半ば強引にカフェに連れて行かれた。店内をのぞいた瞬間、当時、鍾路一帯で布教活動を行っている新興宗教団体があるという噂が頭をよぎり、自分が勧誘されていたことを理解した私は、挨拶もそこそこにその場から逃げ出した。 後になってその“ド”とやらは、仏教や道教での悟りの境地であり、宇宙の根本原理である《道》を彼らが身勝手に解釈して都合よく作り上げ、“ド”を極めて神になったという教祖の言葉を集めたデタラメなものだと知った。内容もさることながら、その宗教団体は、道端で人を捕まえては入会を強制し、入会費を要求したり団体の商品を押し売りしたりするなどの迷惑行為で警察の取り締まりの対象になっていた。そのような団体は減るどころかますます増え、ネット上にはいまだに「“ド”を知っていますか」と近づいてくる人への注意を促す書き込みなどが後を絶たない。 こうした新興宗教は韓国では「似而非(サイビ)」と呼ばれている。いわゆる「エセ宗教」だが、その数は数え切れないほど多く、昨年政府による集団礼拝の自粛要請を無視して新型コロナウイルス感染拡大の原因となった「新天地」はその代表格といえる。新天地のようなキリスト教系のエセとその弊害については、『フェイク~我は神なり』を取り上げた以前のコラムで紹介しているので、今回は仏教系の新興宗教による犯罪を描いた『サバハ』(チャン・ジェヒョン監督、2019)を取り上げ、その実態と共に、絶えずエセ宗教を生み出してきた韓国人の宗教的心性に触れてみたい。 大ヒット韓国映画『新感染』『半島』のヨン・サンホ監督作! 清濁併せ持つ信仰心を描いた話題作『フェイク~我は神なり』近年、K-POPや映画・ドラマを通じて韓国カルチャーの認知度は高まっている。しかし作品の根底にある国民性・価値観の理解にまでは至っていないのではないだろうか。このコラムでは...サイゾーウーマン2020.07.31 次のページ 『サバハ』 実在の人物をモデルとしたパク・ウンジェ牧師 12345次のページ 楽天 セブンネット 「カルト」はすぐ隣に オウムに引き寄せられた若者たち 関連記事 韓国映画『アシュラ』、公開から5年で突如話題に!? 物語とそっくりの疑惑が浮上した、韓国政治のいま韓国サイコホラーアニメ『整形水』が描く、“整形大国”になった儒教社会の落とし穴韓国映画『シュリ』『JSA』 から『白頭山大噴火』まで! 映画から南北関係の変化を見る実在の事件を忠実に描いた人気韓国映画『殺人の追憶』、ポン・ジュノが劇中にちりばめた“本当の犯人”の存在自社の不正を暴く“高卒女子”の活躍を描いた韓国映画『サムジンカンパニー1995』、より深く理解する4つのポイント