カルチャー
[女性誌レビュー]「婦人公論」2021年10月26日号

毒親体験の吉川ひなの、“わが子に与えたいもの”とは? 毒母の連鎖を「終わりにする」と「婦人公論」で決意

2021/10/20 20:30
島本有紀子(ライター)
「婦人公論」2021年10月26日号(中央公論新社)

 「婦人公論」(中央公論新社)の10月26日号が発売になりました。特集は「母が重い、娘がこわい」。母娘問題は最近の流行、かつ婦人公論の得意分野とあり、熱が入っています。さっそく中身を見ていきましょう!

<トピックス>
◎吉川ひなの 家族は一心同体という呪縛から子どもたちが救ってくれた
◎ルポ いつまでも甘えてくる娘にうんざり
◎読者体験手記 親心を無視されて

毒母告白の吉川ひなの、“わが子に与えたいもの”とは

 まず見ていくのは、ハワイ在住・吉川ひなののインタビュー「家族は一心同体という呪縛から子どもたちが救ってくれた」。今年5月に発売したエッセイ『わたしが幸せになるまで 豊かな人生の見つけ方』(幻冬舎)で、毒母に育てられた生い立ちをつづって話題になった彼女。今回のインタビューでも改めて母親にかけられたという「呪縛」を語っています。

 13歳から家計を支え、母親に搾取され続けていたという吉川は、母親について「『家族は一心同体。私とあなたの人生に境目はない』『私が産んだ子だから、すべて私に権利がある』と本気で思っている人でした」「彼女の言うことは絶対で、何をされても我慢するのは当たり前」と振り返り、「10代から20代まで傷つくことだらけ」「自分を幸せだと思ったことは一度もありませんでした」と告白。

 さらに「環境破壊が進んだこんな時代に子どもを産んでも、苦しみを与えるだけ」とも刷り込まれてきたそうで、「産まないのが当然なのだと思っていました」と語っています。

 その後、20代半ばで夫となる男性に出会ったことが転機となって、「幼い頃から持ちえなかった自分への自信を、少しずつ取り戻すことができた」とのこと。現在は3児の母に。

 エッセイでは毒親体験のほかにも、“洗わない育児”や“おむつ無し育児”、肉は食べない(食べると“殺された動物の気持ちが人体にイラつきなどの悪影響を及ぼす”と感じているそう)、電磁波を避ける(寝る前にテレビのコンセントを抜くなど)といった独自の子育て・生活術をつづり、すっかり“自然派ママ”のカリスマに君臨しています。

 今年6月に誕生した第3子は、西洋医学に基づいた妊婦検診は受けずに自宅水中出産、生後約2週間から「おまる」トレーニングをスタートしたことをインスタグラムで明かすなど、ナチュラリストぶりはエスカレートしているように見えますが、インタビューでは「親子関係の呪縛から逃れられず、わが子にも同じことを繰り返すという話をよく聞きますが、悲しみの連鎖はここまで。『私のところで終わりにするからね』という感じです。私は、母から与えられなかったものを子どもたちに与えたい」と、毒母の連鎖を終わらせる決意表明も。

 「与えたい」の気持ちが高まったあまり、実母とは“わが子のためを思って”の方向性が変わっただけ……という結果になりませんように、との思いが胸をよぎりました。「親子関係の呪縛から逃れられず、わが子にも同じことを繰り返す」。本人がそれをわかっているにもかかわらず、完全に逃れることは難しいのだろうか……と、考えさせられるインタビューでした。

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