中学受験は本当に課金ゲーム!? 受験塾を盲信した母子、リアル『二月の勝者』の結末は
ところが、母親であるさやかさん(仮名)は違う考え方を持っていた。潤くんが自分からK中学に行きたいという以上、サポートするのが親であるという主張である。
それゆえ、塾の言うままにオプション講座をすべて取り、もちろん勉強合宿なるものにも参加し、弱点補強にとプロ家庭教師まで頼むようになり、それこそ“課金ゲーム”さながらにお金をつぎ込んでいったという。
妻と息子は、何かをしないとK中学には入れない、それどころか最上位クラスもキープできないという熱病に冒されたかのような勢いだったと聡さんは回想する。
「もちろん、妻とは喧嘩の日々でした。『潤が勉強するのを邪魔するの?』、そして、最後は『潤があなたみたいな高卒止まりになってもいいの?』です。自分は高卒ですが、人並み以上には稼いでいるので、問題ないと思うんですけどね……」
結局、潤くんはK中学に不合格。併願校に入学し、現在、高校生である。
「そりゃ本人も妻も不本意だったでしょうが、僕は逆に良かったと思っています。金をかけました、受かりました、有頂天になりましたっていうのは絶対に良くないと思いますから。大学は本人が行きたければ、行けばいいと思いますが、予備校とかに頼らずに自力で行ってほしいですね。(中高の)授業料は払いますが、僕は予備校代を出すつもりはありません」
聡さんの試算によると、潤くんの塾代関係の諸経費は小6の1年間だけで300万円になっているそうだ。
「我が家には潤の下にも、まだ小さいですが、弟妹がふたりいるんですよ。この子たちも私立に行くとなったら、一体、いくら課金することになるのかと、恐怖しかないですね……」
「合格のために必要なのは、父親の経済力、そして母親の狂気」と言ったのは『二月の勝者』の主人公、黒木先生だが、聡さんの話を聞きながら、改めて、確かにそういう面はあるよなぁという感想を持ってしまった。