中学受験は本当に課金ゲーム!? 受験塾を盲信した母子、リアル『二月の勝者』の結末は
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
いよいよ10月16日から日本テレビ系列で連続ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』が始まる。これは中学受験の実態をリアルに描いて大ヒットしている漫画が原作。「中学受験は課金ゲーム」「親はスポンサー、子どもは金脈」という塾講師である主人公の歯に衣着せぬ言葉に驚いた人もいることだろう。
「塾は営利企業」と言い切る主人公。こういう側面は確かにあるだろう。難関中学にどれだけの受験生を合格させることができたかという“数字”にその塾の存亡がかかっているといっても過言ではないからだ。それゆえ、塾によっては受験生親子を執拗なまでに煽る教室も出てくる。
聡さん(仮名)は息子の潤くん(仮名)に中学受験をさせる気は全くなかったのだそうだ。ところが、潤くん自身が「学校の授業はつまらない! 塾に行きたい!」と言い出したので、近くの塾に行かせてみたら、そこが中学受験塾だったということでスタート。潤くんが小学5年生の春のことだったらしい。
「もちろん最初は真ん中よりも下のクラスの所属でした。ところが、潤は負けず嫌いな子で、4年生から通っている子たちをライバル視しまして、あれよあれよという間に最上位クラスに上がっていったんです」
さぞや息子を誇らしく感じているのかな? と思いきや、聡さんの本音は別にあった。
「うちは代々、地域密着で商売をしているので、何も私立に行く必要はないんです。いえ、むしろ地元で人脈を作ってもらったほうが助かるので、地元公立中、地元高校のほうがいいんですよ」
聡さんによると、家業を潤くんに継いでもらいたいのは山々。しかし、それよりも家業的には今現在のほうが大事なのだそうだ。小学校PTAの要職を積極的に引き受けているのは、地元人脈を強固にする必要があるから。もし潤くんが地元中学に通うようになったならば、当然、PTA役員も引き受ける気持ちがあったという。
「潤の塾は難関校Kに合格者を多数入れていることがウリみたいなんですが、そんなことはまったく知りませんでした。知っていたら、入れなかったです。とにかく『Kに入らずば人間ではない!』みたいな説教を先生が大真面目にするらしいんですよ。『君たちはKに入るだけの実力を備えたエリートである!』みたいなね。まあ、塾生を鼓舞するのが先生の仕事でしょうが、問題は潤がその影響をモロに受けちゃったってことです。小学生が土日もなく勉強している姿は異常です。しかも、僕から見たら、人としては最低な価値基準を持つように思えてしまい、受験には大反対でした」
聡さんによれば、潤くんの下位クラスの子をバカにする発言が目立つようになってきたことが気になり、また、少しでも成績が下がっただけで機嫌が悪くなるなどという態度が目に余るようになって、父親としては非常に問題だと思うようになったという。