芸能
『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』の執筆陣と考える(前編)

推しの「政治」的な言動に抵抗感があるのは、なぜ? K-POP・韓流ファンは避けられない『日韓のモヤモヤ』

2021/10/03 14:00
小島かほり

朝倉希実加さん(以下、朝倉) 私はもともと韓国コスメやファッションが好きで、インスタグラムで情報収集をしていました。それとは別に、高校では日本史を選択して面白かったので、大学2年の後期に加藤先生の朝鮮史の授業を選択しました。そこで、日本史はあくまで日本が主体であり、その裏には朝鮮の歴史、一人ひとりの人生があったと気づかされました。

牛木未来さん(以下、牛木) 私の場合、所属していた学生交流団体のツアーの行き先が、たまたま韓国だったんです。そこで仲良くなった現地の学生と日本軍「慰安婦」の話をした際、「なぜ日本は謝罪も反省もしないんだ」と言われたときに、抵抗感が沸き上がってきて……。自分には愛国心なんてないと思っていたのに、この抵抗感はなんだろうと戸惑いました。

 そこから加藤ゼミで学び始めたのですが、日本の過ちをすっと受け入れられたわけではなく、映画や本などを通して被害がどういうものであったか学ぶことで、認識が変わってきました。人権問題に対する日本政府や社会の問題性を認識する際には、自分自身が小さな頃から感じていた日本社会に対する違和感も影響したと思います。

熊野功英さん(以下、熊野) 僕は高校3年生のときに、友人たちの間でBTSやTWICEがはやっていたので、自分も聴くようになったんです。ミュージックビデオを見て、隣国にこんなすごい文化があるんだと初めて知りました。大学では第二外国語に朝鮮語を選択したのですが、その先生が日本軍「慰安婦」問題のスタディーツアーに誘ってくれたんです。そこで在日朝鮮人の方に、「韓国文化が好きだと言われても、歴史を学ばずに楽しいところだけを見るのは、文化の消費だと思う」「ほとんどの日本人は歴史に向き合っていないし、むしろネトウヨのように差別をしているように感じる」といったことを言われ、衝撃を受けました。

 「自分は韓国が好き」と思っていたのですが、日本が朝鮮半島を侵略・植民地支配した歴史について心の底から認識していなかった。日本軍「慰安婦」問題に関する知識もなければ、在日朝鮮人が日常的に受ける差別や朝鮮学校の「高校無償化」除外なども認識すらしてなかった。文化が好きだからこそ、歴史を忘れていたと気づきました。それが学び始めたきっかけです。

 歴史を勉強し始めてから、『ミスター・サンシャイン』という、「韓国併合」前の日本の侵略に抗した義兵闘争を扱った韓国ドラマを見たんです。もちろんフィクションの部分もありますが、日本が義兵闘争していた人の人生をどう壊してきたか、その暴力性・加害性をリアリティをもって認識できるようになったことも大きいです。

――李さんは韓国からの留学生ですが、日本に興味を持ったきっかけは?

李相眞さん(以下、李) 幼いときに日本に1年間住んだことがあって、そのときは楽しく過ごしたんです。家族の事情で日本の大学に留学したのですが、幼い頃の楽しい記憶と、大学生として来た日本は違うという感覚があって、適応するのが難しかったですね。

 というのも、韓国では自分は「韓国人」で「男性」ですからマジョリティでしたが、日本に来たらマイノリティになる。日本社会で自分の韓国人としてのアイデンティティについて気軽に話せる場がなく、そうした場を求めて加藤ゼミに入ったという面もあります。

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