模試・自宅受験で息子のカンニング発覚……コロナ禍の中学受験、「撤退する or しない」親子の苦悩
「塾からは『受験生のフォローは家庭でやりましょう』と言われているのですが、何のための塾なんだ? って思いもあって、不信感すら感じます。去年も、塾のオンライン対応が整うまでに時間がかかり、本来なら、あるべき講習も受けられませんでした。自宅学習と言われても、正吾のような遊び優先タイプには難しく、なんで、こんな時に受験になっちゃったのかな……って泣きたくなります」
中学受験はよほど精神的に自立している子でない限り、「ひとりだけで頑張る」のは無理がある。たいていの受験生には、楽しい中学生活を思い描くことと、仲間と切磋琢磨しながらともに頑張っているという実感が必須なのであるが、このコロナ禍では正吾くんのようなケースはとても多いと言えよう。
「生活に制限がある中、一番、辛くて残念に思っているのは正吾。親が焦ってどうする!?」と自分に言い聞かせる毎日だという京子さん。
「正直、当初目指していたような満足いく受験にはならないと思いますが、今さら撤退も考えられないので、『みんな同じ条件なのだから、我が家は我が家なりの道を行くしかない』と腹を括ったところ」と苦しい胸の内を明かしてくれた。
一方で、こんな話もある。明日香さん(仮名・6年生)は夏期講習を行かずして、中学受験から撤退を決めたという。母である美奈子さん(仮名)がその理由を説明してくれた。
「やっぱり、コロナです。とにかく、この1年半、振り回されっぱなしで、塾もオンラインになったり、対面になったりで落ち着かず、腰を据えて何かをやるにはタイミングが悪すぎます。私にとっても、学校説明会がオンライン開催という現状では、思うように学校研究もできませんでしたし、これから先、受験までの間に事態が好転するとも思えません。とにかく今は時期が悪くて、明日香ががんばる時ではないんだなって思えてきたんです。それで、明日香に言いました。『今まで身に着けた知識は受験をやる・やらないにかかわらず、明日香のものだから、ここは自信を持って高校受験に切り替えよう!』って」
明日香さんが嫌がるかな? と心配した美奈子さんであったが、それは杞憂だったという。
「あまり勉強が好きじゃなかったのかもしれませんが(笑)、明日香は意外とアッサリ『いいよ~!』って。今は受験のために一時、中断していたテニス教室に復帰して、楽しそうにやっていますし、自分から『やっぱり英語は必要!』と言い出して、個別英語塾に通うようになったんですよ。中学入学までに英語検定にチャレンジするそうです。人生、何をやるにも、時代的背景にはあらがえないので、明日香には、この選択で良かったと思っています」
この未知のウイルスとの共存は私たちの暮らしや、未来への選択にさまざまな影響を及ぼしている。中学受験で言えば、続ける選択をする人、撤退を決断した人など、こちらも人それぞれだ。ただ、中学受験の場合、どの道を選ぼうとも親が懸命に「我が子にとって良かれ!」という祈りを込めての選択である。
それぞれのご家庭に「決めたならば、それが一番良いこと」というエールを筆者は送りたい。