芸能
[連載]崔盛旭の『映画で学ぶ、韓国近現代史』

韓国映画『シュリ』『JSA』 から『白頭山大噴火』まで! 映画から南北関係の変化を見る

2021/08/27 19:00
崔盛旭(チェ・ソンウク)

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 このような同一民族主義に基づく映画は、韓国において保守派が政権を取ると、すぐさま姿を消すことになる。その豹変ぶりは、北朝鮮のそれに負けないほどだ。保守派政権下になった08年からの李明博(イ・ミョンバク)と朴槿恵(パク・クネ)大統領時代、南北関係はまたそれまでと方向を変えて進んでいく。ただし、さすがに軍事独裁時代の反共政策には戻れないため、映画における反共ぶりはかなり変形した姿で現れる。 
 
 「反共映画」「反・反共映画」に続く、新たな反共映画を私は「新反共映画」と名付けたい。この時代の作品としては、人権問題の観点から北朝鮮を批判する『クロッシング』(キム・テギュン監督、08)や、昔の反共映画に酷似しているものの実話に基づいていることを強調した『戦火の中へ』(イ・ジェハン監督、10)がよく知られている。北に対する保守派政権の強硬な姿勢が反映されているものの、かつてのような一方的な表現はもはや成立しないという意味で「新反共映画」といえるのだ。 
 
 そんな中、朴槿恵政権が重大な不正によって幕を閉じ、現在の文在寅(ムン・ジェイン)政権に交代。金大中と盧武鉉をの路線受け継ぐ文政権は当然「同一民族主義」に戻り、金・盧大統領と同様、北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)委員長と会談、再び韓国は南北融和の期待感に満ちあふれた。映画も再び「反・反共」に戻り、本作に代表されるような、南北が力を合わせて危機を乗り越えるといった作品が登場するようになった。 
 
 『鋼鉄の雨』(ヤン・ウソク監督、17)では、クーデターが起こった北朝鮮から、瀕死の金正恩を南に運び出し治療するという展開で、金正恩の後ろ姿やベッドに横たわる姿だけを断片的に見せる手法が斬新だった。これらの映画では、一致団結して難局を乗り越える南北のキャラクターの友情をメロドラマ的に描き、同じ民族ゆえにいかなる混乱も平和的に解決できるという同一民族主義への欲望が堂々と反映されている。 
 
 だが翻って現実はどうだろう? たとえば些細なもめ事が起こるたび、文大統領と金委員長の「融和」の象徴といえる開城連絡所を北朝鮮が一方的に爆破する態度を見ると、同一民族主義があくまで韓国だけの思惑にすぎないことを物語っていないだろうか? もちろん、同じ民族が協力して問題を解決しようとする姿勢が間違っているとは思わない。ただ、どの映画でも結局のところ、南北融和のために犠牲になるのは北朝鮮側の人間であることを考えると、韓国側の同一民族主義にもまたご都合主義が潜んでいるという限界を思わずにいられない。

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