韓国映画『シュリ』『JSA』 から『白頭山大噴火』まで! 映画から南北関係の変化を見る
<物語>
北朝鮮と中国の国境にまたがる白頭山で、観測史上最大規模の噴火が発生。韓国も北朝鮮もパニックに陥って朝鮮半島は甚大な被害に見舞われる。さらなる大噴火が予測される中、南北の破滅という最悪の事態だけは避けようと、政府は地質学者カン・ボンネ教授(マ・ドンソク)に協力を要請、カン教授は北朝鮮が保有する核爆弾で白頭山地底のマグマの流れを変えて噴火を阻止するという作戦を立てる。
除隊を控えた特殊部隊の大尉チョ・インチャン(ハ・ジョンウ)をはじめ、隊員たちは南北の運命がかかった任務を背負って北朝鮮に向かう。そこで作戦の鍵を握る北朝鮮の工作員リ・ジュンピョン(イ・ビョンホン)との接触に成功。白頭山へ向かうが、中国や米軍までもが核を狙って介入し、噴火までのタイムリミットは刻々と迫ってくる。ようやく白頭山に到達したチョ大尉とリ・ジュンピョンだが、彼らを待っていたのは過酷な運命の分かれ道だった……。
白頭山大噴火という社会的な話題性を取り入れ、さらに最先端のCGを駆使してリアルに撮り上げた映像、スリリングなタイムリミット付きの死闘など、高い完成度を見せつけた本作は、韓国国内で800万人以上の観客を動員する大ヒット作となった。とりわけCG技術は、20年の大鐘賞と21年の青龍映画祭で立て続けに「技術賞」を受賞するほどの高評価だった。ハ・ジョンウとイ・ビョンホンのダブル主演かつ初共演作としても注目を浴び、同じく20年の大鐘賞でイ・ビョンホンが主演男優賞を受賞している。本来であれば肉体を駆使したアクションが期待されるマ・ドンソクは、本作の製作にも名を連ねていたこともあって学者役にとどまったものの、最後まで目が離せないエンタテインメント作品になっている。
世界中から問題視されてきた北朝鮮の核爆弾のおかげで噴火を阻止し、韓国も救われるという発想の自由さには正直舌を巻いたが、今でも続く南北の緊張関係ゆえに、映画製作においても豊かな想像力が駆使され、韓国映画界の質を底上げしている点は否めない。ここからは本作の重要な軸である「南北共闘」から見える南北関係と、そこに至るまでの関係性の変遷を、反共映画の歴史を通してたどってみよう。