「中学受験ゼロの田舎」で東京の中高一貫校を目指したスパルタ父! 子どもへの影響は……
そんな中、家族で志望校を偵察がてら上京したのだそうだ。
「正直、びっくりしました。ある学校に見学に行ったんですが、何て言うのか、そこの雰囲気が自由で……。制服もないし、髪型も自由。全部、生徒さんの裁量に任せているんだなってことがわかるし、いろんな子がいて、それぞれを認め合っているって空気が伝わってきたんです。何より、生徒さんたちがアカデミックなんだけど、すっごく楽しそうなんですよね。夫が言っている『視野を広げたら、人生が変わる』って意味が少しわかったような気がしました。そこからですね、私も中学受験に向かって腹を括りました」
もちろん、海斗くんにとっても、それは衝撃的な経験だったようで、帰宅後からは受験勉強に猛烈に燃えるようになったという。
そして、努力の甲斐あって、海斗くんは無事に合格。寮生活を謳歌し、海外語学研修も体験した高3生になっている。大学受験に向かってギアを上げている海斗くんだが、将来的には、日本と海外の架け橋になるような仕事をしたいそうだ。すみれさんは言う。
「もちろん、こんな田舎から都会の学校に一人息子を出した家なんかありませんから、ご近所からは変わり者扱いでしたよ。でも、海斗を12歳で巣立たせたことに後悔はありません。海外語学研修に参加したことで、息子はまた一段と成長したと思います。ここにいたら、海外なんて、夢のまた夢でしたでしょうから……。それにね、たまにしか会えないせいか、海斗は私に、とっても優しいです(笑)。私たち家族にとっては、この距離感が丁度いいのかもしれません」
中学受験をするもしないもご家庭の自由。その家庭それぞれの選択は尊重されるべきであろう。筆者が思うのは、中学受験は「一家団結」のものであると、うまくいくケースが多いなということ。
我が子の将来を俯瞰で見て、親がどの方向に舵を切るかによっても、その運命は大きく変わるのだなあと、すみれさんの話を聞いていた。