中学受験、偏差値ではなく校風重視で選んだのに、周りから「残念」と言われて⋯⋯
「Y女子は校風が気に入っていたので、合格はすごく嬉しかったんです。決して、意気消沈していた入学ではなかったはずなんです。両親も喜んでくれていましたし⋯⋯」
環奈さんの中学受験の志望順位としては、進学校であるM学園→中堅校のY女子。
「でも、気付いちゃったんですよ、自分の本心に⋯⋯。明菜母子にああ言われたことで、蓋をしていた自分の気持ちが表面に現れたんだと思うんです。『そっか、やっぱり、人から見たらY女子は残念で、“ドンマイ!”の学校なのか⋯⋯』って世評が目に見えちゃったって感じですかね⋯⋯。世間全体から、自分の学校も、自分も無価値だって言われたような錯覚を覚えました」
もちろん、明菜さん母子に悪気があったわけではなく、単純に「残念だったね。でも、Y女子で頑張ってね」という気持ちで言ったのだと思うとは環奈さんの弁だ。
「当時は母には言えなかったですね⋯⋯。決して裕福ではない中、無理して私立に行かせてくれているのは知っていましたし、ましてや自分で望んだはずの学校を今になって無価値に思ってるなんて、打ち明けられませんでした」
環奈さんの中1時代はこのことが影響して、いまひとつ学校に溶け込めない感じであったという。転機が訪れたのは中2の部活での対外試合だったそうだ。
「M学園との練習試合があったんです。そしたら、どういうわけか勝っちゃって⋯⋯。チームの皆で抱き合って泣いたんです。なんだろう? その時、『私はこの学校とこの仲間が好き!』って思えて、なんか吹っ切れちゃったっていうか⋯⋯」
中学受験は残酷なことに「高偏差値=価値がある」との刷り込みを受けやすいものだ。
「校風で選んだ!」と言い切る心の隙間に、刷り込まれてきた世評が時として顔を覗かせてしまうこともある。「自分はこの道で大丈夫!」と言えるきっかけはさまざまだが、環奈さんのように何かひとつ自信が芽生えると、負の記憶を乗り越えて強くなっていくんだなという思いを持っている。
環奈さんは現在、中学最終学年。キャプテンとして、チームメイトとともに秋の大会入賞を目標にしているところだそうだ。