中学受験、偏差値ではなく校風重視で選んだのに、周りから「残念」と言われて⋯⋯
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
和歌子さん(仮名)というママから相談が舞い込んだのは、一昨年の梅雨の頃だった。一人娘の環奈さん(仮名)は中学受験で私立Y女子に入学したばかり。長く大変だった受験生活も終了し、和歌子さんもようやく一息つけると思っていた矢先、娘の異変に気が付いたという。
「環奈がどうも元気がなくて⋯⋯。『学校で何かあったのかな?』ってすごく心配したんですが、本人は『なんでもない』って言うばかりで。これがいわゆる反抗期ってものの始まりなんでしょうか?」
このように、「なんとなく我が子の元気がない」と見て取れるのに、子ども本人が「なんでもない」という場合、主に2つのケースが考えられる。
1つは「親に心配かけたくないという気持ちが働くケース」。思春期は親から独立したいと願う気持ちと、そうは言っても親の庇護下でなければ生きてはいけないという現実の狭間で悶々としているのが普通。「心配かけたくない=干渉されたくない」という気持ちも多分に働いて、何が原因で元気をなくしているのかを知らされるのは結局、親が一番最後(友だち、あるいは心を許せる先生の後)ということもよくある。
そして、もう1つが「自分でも言語化できないモヤモヤを抱えているケース」だ。本人も原因がはっきり掴めず、何となくモヤモヤしているということも意外と多いのだ。
後にわかったことだが、環奈さんのケースは下記のようなものだった。
環奈さんが通うY女子はいわゆる中堅校に属するが、受験日・偏差値の兼ね合いでトップ校の受け皿として重宝がられている学校でもある。環奈さんを含むクラスメートの大半は「残念組」ではあるものの、和歌子さんはY女子の校風を高く買っていた。娘の入学をとても喜んでいたし、「娘も同じ気持ち」であろうと信じて疑っていなかった。
そんなある日、環奈さんは地元公立中学に通っている元クラスメートの明菜さん(仮名)と、そのママに遭遇。そして、明菜ママが環奈さんに向かってこう言ったという。
「あら、環奈ちゃん、結局、Y女子に入ったの? あんなに頑張ってたのにね~」と。これに、明菜さんも続いた。
「環奈、ドンマイ! でも、その制服、似合ってるよ!」
話はこれだけだ。中3になった環奈さんの説明によると、当時は以下のような心境だったそうだ。