『ザ・ノンフィクション』納棺師からドライバーに転職した国立大卒の25歳「東京、タクシー物語。後編~シングルマザーと新人ドライバー~」
ちひろにしてみれば、頑張って勉強して国立大学に入り、合っていたと話す葬儀の仕事に就いたものの、コロナ禍でその職を失い、転職活動に励むも30社以上に採用されず、やっと決まったタクシードライバーの仕事だ。しかし、それも半年程度で退職するという、まだ若いのに気の毒になるほど、踏んだり蹴ったりな状況が続いている。タクシードライバーの仕事を休みがちになったとき体の不調があり、ごはんを食べられなくなっていたと話していたが、体がSOSを出していたのならば、辞めてよかったのではないかと思う。
イヤなことがあってもお金になるのであれば耐える原動力になったのかもしれないが、タクシードライバーは給料における歩合の割合が高く、コロナで乗客が減り恭子の月収も10万円台という状況が続く中、おそらくちひろも「さほど」という状況だったのではないかと推測できる。
就職してもうまくいかず退職を選ぶ、というのはその時点だけを見れば「失敗」かもしれないが、「もう次はあんな思いをしたくないからこうしてみよう」という創意工夫につながる。その時はとてもつらかったが、長いスパンで見ればむしろいい経験だったと思える「失敗」が私にもいくつかあり、今では失敗知らずの方がむしろ危険ではないかと思う。
だが、これはずいぶんあとになってからわかることなので、今のちひろは非常につらいだろうなと思う。25歳なので、仕事が順調にいっていそうな周りの人がまぶしく見えがちな時期だと思うが、どうか焦らずに、とちひろの今後の幸せを願う。
次週の『ザ・ノンフィクション』は「夢と涙の六本木2~ミレイとモモの上京物語~」。夢を追いショーダンサーとして六本木で働く20歳のミレイとモモ。ミレイは心が疲弊してショーの練習を休んでしまう。一方、モモは常連客を増やすべくSNS発信に励み、フォロワーは40万を超えるがそれによる誹謗中傷で悩むようになる。