権威を見直し解体するときがきた

トム・クルーズ、ゴールデングローブ賞のトロフィー返却! “映画・テレビ界の嫌われ者”になったアワードが存続危機

2021/05/12 16:50
堀川樹里(ライター)
gettyimagesより

 アメリカの映画・テレビ界の重要アワードとして存在感を示してきたゴールデングローブ賞が、存続の危機に直面している。同賞を主催するハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)が多様性に欠ける人種構成で、人種差別、女性蔑視な体質だったことが次々と露見しているからだ。

 現在、黒人会員が一人もいないことが、白人ばかりのノミネート・受賞につながっていると批判されているHFPA。世間からの批判を受けて、HFPAは「来年のゴールデン・グローブ賞までにアフリカ系の会員を13%増やす」という目標を掲げているが、毎年同賞の授賞式を放送している米NBC局から、厳しい現実を突き付けられてしまった。

 NBCは5月10日、「HFPAが改革を進めると信じてはいるが、それを適切なものにするには時間がかかるだろう」とし、「来年の授賞式は中継しない」と表明。再来年以降の放送再開は改革の結果次第という見解を示した。

 役者からの批判も続いており、「HFPAの記者からセクハラ同然の女性蔑視的な質問を受けた」と告発して同賞をボイコットするように呼びかけた俳優スカーレット・ヨハンソンに続き、今度は世界的大スターのトム・クルーズがゴールデン・グローブ賞にNOを突き付けた。

 米ニュースサイト「Deadline」は10日、トムが『7月4日に生まれて』(1989)、『ザ・エージェント』(96)で獲った主演男優賞と、『マグノリア』(99)で獲得した助演男優賞の計3本のゴールデン・グローブ賞のトロフィーをHFPA本部に送り返したと報道。トムに続く形で、今後、多くの俳優から大量のトロフィーがHFPAに返却されるだろうと伝えた。


 ゴールデン・グローブ賞=アカデミー賞の前哨戦という立場を利用し、製作会社やクリエイティブスタッフはもちろん、俳優陣にまで横暴な態度を取っていたといわれるHFPAの会員たち。接待やプレゼント、さまざまな“特別扱い”を要求する彼らに業界自体が手を焼いてきたようだが、大スターであるトムの無言の抗議により、いよいよゴールデン・グローブ賞の存在そのものが窮地に追いやられた。

 過去5回、同賞授賞式で司会を務めた俳優/コメディアンのリッキー・ジャーヴェイスは、2020年の授賞式オープニングで、「たくさんの才能ある有色人種の方々がノミネートされませんでしたが、どうしようもないことなんです。ハリウッド外国人映画記者協会の皆さんは人種差別主義者ですから」という辛らつなコメントで会場をざわめかせた。

 今回の一連の騒動でこれが事実だったことが明るみになり、リッキーの「ゴールデン・グローブは低レベルな賞」「映画会社が金で買っている賞」「出来レース」といった発言も、会場にいたセレブたちが意味深な笑いを浮かべていたため、すべて事実なのではと映画ファンはいぶかしんでいる。

 このことから、「HFPAはうみを徹底的に出すべきだ」「いや解体すべきだ」といったシビアな意見がネット上にあふれれ、セレブたちのHFPAボイコットも今後ますますヒートアップすると予想されている。

堀川樹里(ライター)

堀川樹里(ライター)

6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴25年以上。

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最終更新:2021/05/12 16:50
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