カルチャー
[再掲]インタビュー

ユニクロ・ウイグル問題から考える、ファストファッションについて知っておくべきこと

2021/04/15 18:27
サイゾーウーマン編集部
写真ACより

 今や、私たちの生活にすっかり定着したファストファッション。かつては「安かろう悪かろう」といった印象もあったが、近年は品質も向上し、アパレル業界の大部分を担っているといっても過言ではないだろう。

 一方で、その多くを人件費の安い開発途上国の工場で生産しており、労働環境の問題が絶えないのも現状だ。2013年には、バングラデシュの首都ダッカ近郊の縫製工場が入った商業ビル「ラナプラザ」が崩落し、死者1,100人以上を出す大事故が発生。この縫製工場では、日本を含め世界展開しているファストファッションブランドの商品も生産していたという。

 そして今、新たな議論が巻き起こっている。ユニクロを展開するファーストリテイリングが4月9日、フランスの人権擁護団体などから「強制労働の恩恵を受けている」として告発されたのだ。これは、中国・新疆(しんきょう)ウイグル自治区での強制労働問題を受けたもので、ユニクロのほかに、日本でもおなじみのZARAなど、4社の名前が挙がっている。

 ネット上では、「アパレル業界は人権について真剣に考えるべき」「一刻も早く、強制労働の問題が解決してほしい」など、ファストファッションの在り方を問う声も。“消費者”である私たちの意識転換も求められるわけだが、まずはファストファッションの実態を知り、そこから洋服選びについて考える必要があるだろう。

 サイゾーウーマンでは、アパレル業界に詳しい朝日新聞社・仲村和代記者に、消費者が知るべき「ファストファッションと労働環境」について話を聞いていた。決して他人事ではないこの問題に向き合うべく、同記事をあらためて掲載する。
(編集部)


『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(光文社新書)

(初出:2020年3月5日)

ファストファッションとアパレル業界の闇――消費者が考えるべき労働環境のこれから

 短いサイクルでの大量生産・販売によって、流行の商品を低価格で販売するファストファッション。私たちの生活にすっかり定着し、誰しもクローゼットに1着はあるのではないだろうか。前編では、ファストファッションを製造する工場の実態について、『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(光文社新書)を共同執筆した朝日新聞社の仲村和代記者にうかがったが、今回は消費者が購入時に意識すべき点について聞いてみた。

新品の服が10億点も焼却される現実

――私たちの「安く買いたい」というエゴが、こうした状況を生み出しているように感じました。ファストファッションの流行が、日本のアパレル業界にもたらした影響などはありますか。

仲村和代さん(以下、仲村) ファストファッションのおかげで、昔と比べるとはるかに安い値段で、おしゃれを楽しむことができるようになりました。質は多少落ちるかも知れませんが、それでも短い期間で買い替えるものであれば、消費者も特に問題には感じません。むしろ、流行の服を安く買って、どんどん買い替えるような風潮を、消費者自身も歓迎したところがあると思います。体形や好み、流行は変わりますからね。

 服を「1~2年で買い替える」のが当たり前になり、安い価格に慣れた消費者にとって、ファストファッションの2~3倍の価格で販売される百貨店やセレクトショップに置かれているようなブランドは高額に感じるでしょう。一方、こうしたブランドのメーカーも、コストを抑えるためにたくさん発注し、大量の洋服を作る傾向が出てきました。30年前と比べると、消費・購入量はさほど変わっていませんが、生産量は倍くらいに増えています。その結果、服の大量廃棄の問題が発生。コスト削減のため、必要とされる以上の大量の服が作られるようになり余ってしまうからです。

――大量に余った洋服はどのように扱われるのでしょうか。

仲村 一部は在庫処分業者がタグなどを外し、海外に輸出したり、国内で販売したりすることもありますが、かなりの割合が捨てられています。日本国内では、燃えるゴミと同じように、自治体の焼却場などで燃やされているものが多いそうです。また、リサイクルといいつつ、固形燃料として結局燃やされているものも。国が統計を取っていないので、正確な数字は不明ですが、ざっくりいうと年に約40億点の衣料品が作られ、消費量は約20億点なので、その分を引いた20億点が余る計算になります。一度も売れず、場合によっては店頭にすら並んでいない新品の洋服が、年に10億点以上、捨てられているとみられ、つまり新品の服の4枚に1枚は、そのまま捨てられているんです。

――大量に服が廃棄される一方、最近はいろいろな女性誌で、「サステナブル」(持続可能な社会を目指す取り組み)や「SDGs(エスディージーズ)」(注)という言葉を目にします。

注 SDGs:「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で、全ての国連加盟国のリーダーによって決められた、国際社会の共通目標。アパレル業界でも、「SDGs」を目標に掲げ、「衣服のリサイクル」「環境に配慮した工場」「生産量の適正化」という取り組みを行っている企業が出てきている。

仲村 この1年くらいで、ものすごく目にするようになりましたね。「この服はどう作られているのか」「環境汚染はしていないか」を考えようという流れは、すごくいいことだと思います。いろんなファストファッションブランドが出てきて、「安かろう悪かろう」は通用しなくなり、分岐点を迎えているのでは。最近は、「エコ」や「サステナブル」を意識したファストファッションのブランドもあるので、消費者が、「安い」という理由だけで服を買う時代は終わり、“選ぶ”“吟味”する時代になりつつあるのだと思います。

 ただ、SDGsを掲げている企業もいろいろ。理念についてあまり理解せずに、とりあえずアピール材料に使っている企業も少なくありません。消費者は企業の何を信用すればいいのか、ますます悩むと思いますが、「企業が発信することは真実なのか」と常に疑うクセをつけた方がいいと思います。

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