皇后さまと女官の複雑な関係明らかに!? 知られざる寵愛と「手紙」の存在
皇室が特別な存在であることを日本中が改めて再認識する機会となった、平成から令和への改元。「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます!
前回まで……昭和時代の宮中で本当に起きた「魔女追放」事件。当時の皇后様(後の香淳皇后)の腹心の部下であったはずの女官・今城誼子さんは、宮中祭祀に非常に熱心な方で、皇后さまにも強い姿勢で祭祀に関して物申していましたが、それゆえに神がかりの“魔女”として汚名を着せられ、ついに宮内庁の権力者・入江相政氏によって追放されることになりました。
皇后さまと女官の複雑な関係
――皇后さまは寵愛していた女官・今城さんの退任時、突然の別離に嘆いておられるだけでなく、御機嫌なご様子の時もあったと、前回うかがいました。どうにも矛盾した様子を覚えるのですが……。
堀江宏樹氏(以下、堀江) この問題は重要かと思われます。ちなみに、皇室ジャーナリストの河原敏明さんは、この皇后さまの「矛盾」について特に言及なさっておられません。ですから、これは僕の推論ということになりますが……。
天皇陛下に物申すことが立場上許されていない皇后さまにとっては、今城さんの言うことは確かに正論なのかもしれないけど、いつしか「正論で殴られる」というお気持ちに、なられていたのかもしれない。
入江氏は、日記の中で皇后さまが「長年、魔女におどされつづけていた」ということを何度も書いています。宮中祭祀をもっと熱心にしないと、皇室は滅びる、日本はおかしくなるのでは? という“警告”が、今城さんからあったことは簡単に推測できますよね。それを「脅し」と入江氏は表現したのであろう、と。そして、それに信心深い皇后さまが影響されないハズがない、と思われます。
昭和天皇に「祭祀をさらにご熱心に行ってください」などと伝えられるのは、皇后である自分しかいないと思われたでしょうが、同時に慎み深い方ですから、いくら侍従長を通したところで、皇后として天皇に物言いをすることは越権行為であると苦しく感じられていたのではないでしょうか。
そして、皇后さまは、今城の言葉と自身の立場のジレンマに長年、苦しんでおられたのではないか……と。
皇后さまにとって、今城さんは頼りになる女官だったことは事実でしょうが、彼女の存在が、皇后さまにとって一種の重荷であったことも間違いはないと僕は感じています。今城さんが退任すれば、その“しこり”もすべて取り払われたことになりますから、それが意識的・無意識的かはわからないにせよ、皇后さまの「御機嫌」のよさにつながっているのではないか、と。
――複雑な胸中ですね……。でも、信頼しつつも心的な重荷になっていた気持ちはちょっと理解できます。一方で、宮中から退任した今城さんのその後は?