コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

天皇陛下を味方につけた侍従長、女官を追放! 宮内庁に渦巻く“男の嫉妬”が生んだ悲劇

2021/04/03 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

皇室が特別な存在であることを日本中が改めて再認識する機会となった、平成から令和への改元。「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます!

昭和天皇と香淳皇后(gettyimagesより).

前回まで……昭和時代、皇后さまの信頼を一身に集めながらも、宮内庁から「魔女」と呼ばれた女官・今城誼子さん。宮内庁の権力者、入江相政侍従長はその今城さんを憎々しく思い、あることないことを宮中で触れ回り、ついには皇后さまを新興宗教に傾倒させた犯人として、晒し上げるという暴挙に出ました。そしてついに、魔女狩りに断行するのです。

――前回は、天皇皇后両陛下の寵愛を女官・今城誼子さんに奪われたと感じた入江相政侍従長の“男の嫉妬”が、魔女狩りにつながったというお話でしたが……。

堀江宏樹氏(以下、堀江) 皇后陛下の寵愛を、女官・今城さんに奪われたと入江氏が感じていたというエピソードがあります。

 入江氏は、あの藤原定家の血を引く、旧華族の出身です。「歌の家」の生まれでしたから、それにもプライドを持っています。もともと宮中の新年恒例行事である「歌会始」で、皇后様のお歌を清書する役割は入江氏だったのに、それをある時以降は「今城誼子に書かせる」と言われ、大ショックを受けていたそうです。

 ただ、この話は皇室ジャーナリストの河原敏明氏の主張で、どうやらその出所は今城誼子の養女だった美佐恵さんという女性であり、入江氏の日記ではなさそうなことを考えると……。

――どの程度まで信頼できるかという話でもありますね。

堀江 そこなんです。入江氏が今城さんを魔女として追放した後、今城さんはマスコミとの接触を絶ったまま亡くなりましたから……。

 宮中関係者しか知り得なかった、一連の魔女問題の情報が世に出始めたのは、平成になってから。すでに亡くなっていた入江氏のご子息の手で『入江相政日記』(朝日新聞出版)の刊行が始まってからなのでした。

 理由はともかく、魔女こと今城さんの女官解任は、入江氏とその周辺の間で練り上げられ、昭和天皇の了承を得た上で、計画されました。しかし、今城さんには寝耳に水の出来事で「私、どうして辞めさせられるの?」と周囲に聞いてまわるほどだったとか。

――今城さんに気づかれないよう、極秘裏に計画が実行されていたのがわかりますね。

堀江 解雇理由は、入江の日記によると「お供がいけないといふのに、置いておけないといふ理由」だったそうです。曖昧な表現ですが……この頃、天皇皇后両陛下はヨーロッパ訪問を控えていました。

 「そのお供には、今城さんが問題人物だから連れてはいけないし、そんな問題人物を、入江侍従長など“押さえ”が効く人物が留守中の宮中にも置いてはおけないから、今城さんには辞めてもらった」というような意味になると思われます。

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