テレビもいろいろ変わってんだね

視聴率、見逃し配信、トレンドワード……業界人は何を一番重視している? 「人気番組」の基準が変わった!

2021/04/05 08:00
後藤壮亮
視聴率、見逃し配信、トレンドワード……業界人は何を一番重視している? 「人気番組」の基準が変わった!の画像1
写真ACより

 番組の命運を握る「視聴率」に変革が起きたのは1年前の春。これまで視聴率といえば「世帯視聴率」を指していたが、「個人視聴率」が主な指標に加わったのだ。

「今までは、テレビを持つ世帯の中で、誰か1人でも番組を見ていたら“視聴者”にカウントされる世帯視聴率が全てだったので、個人視聴率と言われても、よくわからなかったのが本音です。ここ10年間、世帯視聴率は2ケタ台を記録すると好調だとされてきましたが、“何人見ていたか”を測る個人視聴率は、視聴者層もわかるのがメリット。ただ、母数が大きくなる分、世帯視聴率よりも必ず低い数字が出るので、これには戸惑いました」(テレビ局関係者)

 しかし、今は視聴率以外にも「好調」「不調」を測る指標があまた存在する。例えば、3月21日に最終回を迎えた連続ドラマ『天国と地獄〜サイコな2人〜』(TBS系)は、1月17日の初回放送後、無料見逃し配信(TVer、TBS FREE、GYAO!)の合計再生数が、「日曜劇場」枠として歴代最高の約236万再生を記録したとネットニュースなどで報じられ、好調ぶりを裏付けた(『半沢直樹』は見逃し配信がなく、記録の対象外)。

 また、全話平均世帯視聴率8.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、決して「好調」とは言えないまま終わった水曜ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系)は、第1話(1月13日)の「TVer見逃し配信」が好調だったようで、ドラマ公式サイトもトピックとして「再生数が約200万回と、日本テレビの歴代ソフトで第1位を獲得!」「1月20日放送の第2話も、現在、5日間(1/20~1/24)で再生数約150万回と好調」と、その注目度をアピールしていた。

「ほかの尺度でいうと、放送開始から7日内に視聴された割合を示す“タイムシフト視聴率”もあります。“録画再生率”とも呼ばれているように、リアルタイム視聴ではなく、録画で見る人を考慮した数字です。3月18日に最終回を迎えた関ジャニ∞・大倉忠義主演の『知ってるワイフ』(フジテレビ系)を例に見ると、4日放送の第9話は世帯視聴率7.6%、タイムシフト視聴率8.3%と、録画で見る人の割合が多かった。同時期に放送された連続ドラマはほとんど、世帯視聴率よりタイムシフト視聴率のほうが下がる傾向にあったので、珍しい現象だといえるでしょう」(芸能ライター)


 これだけさまざまな数字がある中で、テレビ関係者は一体、何を重視しているのだろうか?

「今は完全に、個人視聴率です。大体6%が目安になっていて、個人視聴率が5.5%あれば、たとえ世帯が8%と奮ってなくても、人気番組という見られ方をします。ただ、これまで何十年も“世帯視聴率が高いと人気番組”というイメージだったので、個人視聴率が導入されたあとも、それは抜け切れていない。『天国と地獄』の最終回が世帯20.1%でフィニッシュしたときは、『大台に乗った』などとネット上で話題になっていましたし、視聴者にはわかりやすい指標なのでしょう」(前出、テレビ局関係者)

 しかし、この個人視聴率を重視する傾向には、欠点もあるという。

「個人視聴率は8~9%を記録すると『高い』という認識ですが、仮に3~4%でも、危機感を持ちづらい。世帯視聴率の場合、2ケタ越えで“好調”、4%台で“打ち切り水準”といわれる一方、個人視聴率は3%と低くても、若い世代の視聴者が多かったことが理由で4月の改編を乗り切った番組もあり、現場レベルでは、その判断基準がよくわからないのが実情です」(同)

 こうした数字以外だと、今はTwitterの“トレンドワード”も欠かせない存在のようで、「手っ取り早く盛り上がっているのがわかるため、反響があるかどうかは、トレンドで確認したりもします」(同)とのこと。いずれにしても、視聴者にとって面白い番組を届けてほしいものだ。
(後藤壮亮)


最終更新:2021/04/05 08:00
ヒット番組のつくり方
正直、視聴者にはどれも関係ないッス